わかりあえないよ

「理想郷」を見た。

そもそもがわかり合えないという悲劇だった。夢を見る者、夢を持てない者、分かり合えない分断の話。とんでもない映画だった。コミュニケーションが成立しないという悲劇。スペインの山奥の村。セカンドライフとして地方を活性化させたいという理想を抱きフランスからやってきた中年夫婦。彼らには学があり希望がある。その地に未来を見ている。しかしその地で50年暮らす男たちには未来がない。若者はみんな外に出て行き。村にとどまった者にはパートナーもいない。その地でただ絶望と生きている。そこに風力発電所を建てるという。彼らは保証金という宵越しの金を求める。村なんか破壊されても何とも思わない。しかしその地に未来を見ている夫婦はその建設に反対する。数人の反対意見で、計画は立ちゆかなくなる。そして余所者と住民との間にあつれきが生まれる。夫婦は、特にその夫の方が執拗ないじめに遭う。農作物を台無しされ、やがて命の危機すら感じるようになっていく。そしてとんでもない悲劇が起きる。なんとも言えないのは、この映画どちらの言い分もわかってしまうことだ。その日暮らしをする村の男達を全肯定はできないが、余所の者の勝手な理想を押しつけられても困る。それはよくわかる。理想を抱く夫婦の心情も理解出来る。しかし彼らの理想はただの自己満足にすぎない。なんとも言えない分断がそこにある。分かり合えないことの絶望。対話が道を開く。それしかないのだが…。理想だけではどうにもできない現実を見せられた。

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