だんちえいがです

「TOKYOタクシー」を見た。

とてもよかった。オリジナルの方の「パリタクシー」は見てないんだけど、キャスティングふくめ、すごく面白いアレンジがされている映画だと思った。まず主演の倍賞千恵子木村拓哉って「ハウルの動く城」なんですよね。あれもある意味イケメンが老婆を自分の乗り物に乗せる映画なわけですよね。本作は城ではなくタクシーに乗せるわけだけど、そのスタート地点が葛飾柴又って「男はつらいよ」の場所だったり、そして主人公の名前がスミレさん、サクラを感じさせる名前になっている。タクシーで彼女の思い出の地をめぐりながら、人生を運転手に過去を語っていくというたった1日のロードムービー。シンプルでわかりやすい一本道の話ながら、監督の山田洋次と主演の倍賞千恵子が初めて一緒に映画を撮った(その後70本以上作ってるみたいだけど)「下町の太陽」の舞台になった場所が最初に向かう場所だったり、自身の映画人生を振り返りながら、さらに戦後史も辿っていくような映画になっている。先の下町の太陽にも出てくるけど、団地映画好きとしては昔の団地風景の再現はぐっとくるものがあった。団地暮らしが最先端の暮らしだった時代の生活風景。夫になった男の最低さがにじみ出る2間しかない狭い団地の一室を完全な趣味の部屋にして立ち入った息子をせっかんする感じとか、夫の家庭内暴力が当たり前のように見られていた時代に耐えかねた主人公がとる行動とか、主人公の若い頃を演じている蒼井優のパートもよかった。東京を行くタクシーから見える東京は、見覚えのある場所ばかりで、今この時代の東京の顔を記録する装置としてもこの映画は機能していくんだろうなと思いつつ、しかし渋谷の道をそっちに行ってそこから新宿?え?東京駅?、横浜、葉山に向かうのにいったいどんな道順で東京を走ってるのか困惑するような複雑な走り方をしていて、これはメーターはとんでもないことになるだろうな、なんて思ってしまった。もちろんそんな小さな話はどうでもよくなるような結末がしっかり用意されてましたが。ちなみに立ち寄る横浜で食事する店で、奥の方で誕生日のお祝いされているおじいさんがいて、見覚えがある顔だけど、誰だっけって思ったら小林稔侍ですね。本当に一瞬の登場だけど。どうあれ劇場はけっこう人が入ってて、おそらく狙い通り年配客が多くて、きちんとそこに向けて、山田洋次らしい映画がわかりやすくきちんと供給されていることに、作品の良さ以上の価値があるなと思いました。ラストはどちらかというと切なさがつのりましたが、色んな意味でいい映画と思いました!

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えとのぎゃっぷが

「ペリリュー ー楽園のゲルニカー」を見た。

それこそが地獄だよねを考えさせられる作品。珍しく原作を読んだ状態で見たアニメ。去年の春頃から1年かけて原作マンガ11巻を読んだ。きっかけは忘れたけど、この絵のタッチで太平洋戦争の地獄を描くという試みがすごいなと思ったからだ。何せ頭がやたらデカイ三頭身。ゆるくてかわいいタッチに現実味がない。しかし起きていることはとてつもなくハード。そのギャップの中で浮かび上がるものがあった。この絵だからこそ浮かび上がるものがある。そんなマンガだった。それは主人公がマンガ化を目指す青年で、彼は戦火の中でも絵を描き続ける。そんな彼の目を通して見るこの地獄という一種のフィルターのような効果を生んでいて、そこにこの作品の独自性があるなと思っていた。それはしっかりアニメにも引き継がれていて、より精細に描かれる天国のような島の景色、そしてリアルな兵器の描写。アニメならではのギャップが追加された印象がある。前半はプライベートライアンを彷彿させる米兵の上陸がある。激しい銃撃が繰り広げられ、戦車が投入され、火炎放射器で焼かれ、肉体が飛び散る。絵はあくまで三頭身。しかし世界の残酷さはひたすらハードだ。第二次大戦末期のペリリュー島。本来楽園だったはずの地が、戦争によって地獄になる。原作では現地の人と隠れたり、敗戦に至るまでの逃避行が長く描かれるのだけど、映画でメインで描かれる地獄はその先だったりする。ネタバレになってしまうのかもしれないが、この作品における悲劇は、じつは戦争が終わったことを知らないまま、生き残った部隊がひたすら潜伏し続けること。真実を知らないまま、いや知っても信じようとしないまま、ある意味自分達の選択で地獄の中に居続ける。結局、長く生きて潜伏できたのは、すでに戦争が終わっていたからなんだけど、終わってないと信じる彼らは、いつか援軍が来ると信じて米軍から物資を盗み、食料を蓄え、兵器も充実させていく。そして過酷な環境に適応して生活を営み始め、そこで娯楽まで生み出して、生活をしていく。ほのぼのとしたタッチで過酷な状況を描くことで、微笑ましい日常に見えるそこはじつは地獄でしかないという。やはり皮肉なギャップがそこにある。そしてやはり過酷で厳しい現実を最後に突き立ててくる。見た目のソフトタッチが、見ることのハードルを下げる効果もある。重要な作品であると思う。

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だいじなものがさ

ズートピア2」(吹替)を見た。

圧倒的に間違いない!映画だった。とにかく「2」である。「2」ブームが到来したのかもしれない。2作目は「2」。当たり前だけどこれ大事。「1」の次は「2」なんだよ!そしてきちんと続編してました。1のすぐあとの話。現実世界では9年が過ぎてたみたいだけど、ほんと1作目つい数年前に見た記憶があるけど、10年近く経ってたなんて…すごい映画でしたからね。そして期待値マックスで劇場にいくわけです。そしたらもう劇場完全満席なんです。たぶん普段あんまり劇場に来ない層が、これだけは見たい!見るぞ!って鼻息が伝わってきそうな、すんごい熱気が劇場にあふれてて、予告中はスマホで自撮りしていえーい!ってやってたり、映画はじまってもけっこうふつうにスマホ見てたり、なかなかでした!そして映画ですが、期待値はそれなりに上げて見に行っても、じゅうぶんに楽しめる、素晴らしいエンタメ映画でしたよ。もうめちゃ楽しい。今回はとにかくスピード感がすさまじくて、めまぐるしくめくるめく展開が楽しい楽しい。完全にジェットコースター。前回は肉食と草食の壁を超えてうさぎとキツネがバディになるまでの物語で、理想通りではない世界で、理想とは違う相手と、それぞれが違ったまま、でも歩み寄れるじゃんって、共生の映画だったと思うけど、今回はその世界にもともといたはずの追い払われた人たちの話で、実はそこは彼らが作った世界だった?みたいなやっぱり今を感じさせるテーマになってる。けど、まーしかしスピード感がすごい。なにか考えてる隙もないくらい目まぐるしい。いや、面白いですよ!めちゃ面白いと言ってもいい。美味しいと評判の焼き肉屋が、新しくステーキ屋作ったってきいて食べにいったらやぱっぱり美味しかった。みたいな。ステーキも美味しいじゃん!でもやっぱ焼き肉!?みたいな、なんだかよくわからんな。とにかく楽しかたんです。もうじゅうぶん素晴らしい映画ではあるんです。でも、ですね。不満がないわけじゃない。いや、どちらかというと、不満の方が大きいわけです。この映画最も大事なものを描き忘れてます。散々予告を見てきて、今回は、なるほど爬虫類の話か、と思ったわけです。メインは蛇の話ですよね、そしてトカゲが出て、亀が出て、次々と爬虫類出てきますよね。海の哺乳類もいましたね。多様性!いいですね!でもさー大事なもの忘れてませんか?いや本当。すごーくすごーく大事なものを見落としてますよね。そうです、ワニです。ワニがでてこなーーーーい!!なんで?いちばん大事な爬虫類を忘れてやいませんか!わたしは期待してたんですよワニを!このズートピアに。今年最後にして最大のワニ映画を期待してたのに。前作で描かれてなかった(の全然気がついてなかったですが)爬虫類にスポットがあたると聴けば、そりゃ、ワニでしょ!ってなりますよ。それがこの世界にワニはいない。あれですか?ワニは爬虫類とはいえ特殊でどちらかというと鳥に近いからですか?…とにかく、ガッカリしました。見損なったよ、ズートピア。って、エンドクレジット見てたら、最後の最後に、ん?これは、あ、そういえばあなたたちもいなかった?3はその話になるの?ということは、まさか4で…。期待して待ちたいと思います。とにかく大ヒット!おめでとうございます!ワニを出すと、もっといいと思いますよ!

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ディズニーと言えば、これでもスルーされましたから!

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げつようなんです

月曜なのでnote書きました!年末です。本当に時間に追われてます。時間のデザインなんて本を出したくせに意外に時間のやりくりはヘタクソなのかもしれない。だから、必死にデザインして時間を作ってるってだけかもしれないけど。noteに書くほどのことでもないかなってところだと、ドラクエ1&2を少しでも長く遊ぶために、ルーティーンにしているドラクエXどうぶつの森は、現在は日記を書きながらやることにしてます。起動時間がけっこう長いので、その短縮の意味が強いです。それによって1日15分ゲームが20分〜25分に拡張されました。その代わり日記の時間が少し長くなった気もしますが、これもある意味時間のデザインです。そうそう、そのかいあって無事ドラクエ1をクリアしました。竜王、強かった。勝てるこんなの?って思ったけど、装備をきちんとかためたら2回目でなんとか勝てました。耐性装備をしっかり考えないとダメだったり、適当にやってもクリアできなくなってますね。そして、念願の2に突入です。オリジナルのファミコン版はわたしの人生ベスト1ゲームです。オープニングから旅立ちまでがかなり長くなってます。いい所もありつつ、やっぱり言いたいこともあります。でもやはりドラクエ2ってだけで気分が上がります。スマホ版以来のプレイ。結局MSX2版以外は全部遊んでるんじゃないかな。携帯電話版もやったし。いま5日目。まだローレシアサマルトリアの大陸にいます。そこまでの展開もちょっと違って、サマルトリアの王子が仲間になる前に妹がサポートとして仲間になる展開とか、そのへんはよくできていると思いました。のんびり遊びます。2ヵ月くらいかかるかな…。ゆっくり楽しもう!!

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むかうさきはどこ

「佐藤さんと佐藤さん」を見た。

結論から言うと、今年ベストってくらいよかった。ある夫婦の話。佐藤さんと佐藤さん。名字の変わらない結婚。現在37歳。そこから22歳大学生の佐藤さんと佐藤さんが出会って意識し始める瞬間に時間が巻き戻って、ゆっくり15年が描かれていく。きっかけは倒れた自転車。倒れた自転車を起こす手伝いをしてくれるところで初めて意識する。同じコーヒーサークルに所属してる佐藤さんと佐藤さん。2人はやがて同棲する。男の佐藤さんは弁護士を目指して勉強してる。仕事は塾講師のバイトでお金はない。女の佐藤さんが働いて家計を支えてる。男女間の無言の役割分担とほんの少しの経済の格差。その気まずさが少し日常の背景にある。夢のためにがんばる男性とそれを支える女性という関係でバランスをとっていたのに、それが決定的に崩れる。彼の勉強の助けになればと勉強に付き合ってるうちに、彼女の方が試しに受けた司法試験に合格してしまう。そのシーンが最高すぎる。合格発表で落ちた彼の頭に葉っぱがついてる。その残念な佇まい。そこからの気まずさが素晴らしい。2人で入る喫茶店志村けんのひとみ婆さんを薄くしたような店主がいて、ブルーマウンテンを頼んでもなかなか通らず巨大なパフェが運ばれてくる。パフェを食べながらの沈黙。この映画、気まずさとコミカルの配合が絶妙すぎる。実はずっと気まずいし、すれ違ってるはずだけど、その描き方が実に見事で、ただ気まずいだけにならない。日常って、ほんとそうだよねと思う。怒りながらとる行動はバカみたいだし、ムカつくって思うような言動は実はチャームだったりもする。人間関係はその気まずさや、ぶつかり合いや、怒りだったりが混ざり合って、その中にやはり笑いやおかしさも混在する。この映画のいいところは、すごくレイヤーが厚いところ、主人公たちだけじゃなくて、色んな家族の断片が描かれる。一片しか描かれない誰かの人生も複雑で、一辺倒ではない。不幸そうに見えても実は幸せかもしれなくて、ふつうにふるまってる人の背景には、とてもつらい過去があったりもする。総じて、誰も当たり前に幸せなんかじゃない。だいたいみんな不幸を抱えている。一部だけを照射して見るとそれは問題だらけで、おかしなことになってるけど、その集積が実は良き方に向かっていくような、それは思っていた幸せとは違うかもしれないけど、きちんと人生をよくしていく結果に結びつていくし、きちんとそれなりのところに着地する。そういう人の営みの根幹を描いているようで、すごく苦いけど、希望のある映画だなと思った。「ファクトフルネス」ってすごく売れた本があったけど、あれは世界は問題だらけですごくおかしなことになってるけど、数字でみると確実に世界は良くなっているという事実をデータとして提示していて、なんとなくそれに近いなって思った。でも、苦いんだよね。最初と最後が自転車でサンドイッチされる映画だけど、最後の自転車、色んな意味で沁みました。最初と最後で言えばもう一つ、そこだけ出てくる中島歩のキレキレのクズ男ぷりもすさまじかったです。そして途中には吉岡睦雄が例によってちょいクセつよの交番の警官役で出てたりして、それも最高だった。いや、これ今年ベストかも。見終わって、あれ?劇中、音楽かかってなかった?って思ったけど、そうでした?

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しんくろしちゃう

「ブラックフォン 2」と「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」を見た。

ホラー映画とロックスターの伝記映画。まったく毛色の違う2本立てだけど、これがですね…驚くほど共通点が多い映画で、思いがけずびっくりしたので一緒に書きます。なので文章はたぶんすごくとっちらかると思う。まずこの2本、最大の共通点。それはどちらも1982年が舞台ということ。そしてもう一つ。テーマが家族による過去のトラウマを主人公が乗りこえていくセラピー映画であること。別に狙って見たわけでもなんでもなくて、この日が近所でのこの2本の上映の終了日で、どっちも見たいと思ってたら、レイトショーで続けて見れることがわかって、駆け込みで見ただけなんだけど、見ていて、え?また1982年?また家族による心の傷?って思いながら、こんな偶然もあるんだなって驚きました。これまたこじつけみたいだけど、ブラックフォンの舞台がコロラド州デンバーで、スプリングスティーンで彼が制作するアルバムのタイトルがネブラスカ。この2つの州はお隣同士。そしてネブラスカを作るきっかけになった事件があって、それはテレンスマリックの映画「バッドランズ」の元になったスタークウェザー事件というもので、それが起きたのが1958年なんだけど、ブラックフォンで物語の発端になる過去に起きた少年たちの失踪事件がちょうどその頃の事件だったりして、そこもつながるの?って思いながら見てました。もちろん単なる偶然なんだけど、こういう一致にはなにか運命のようなものを感じてしまう。で、軽く各映画につてもメモ程度に感想を書きます。「ブラックフォン 2」はホラー映画の続編。ホラー嫌いなんですよ。でも行っちゃう。バカかと思う。ブラックフォンの1も劇場で見た。これが、ホラーは嫌いだけど見てよかった映画だった。だから2も行った。レイトショーで上映終了直前の駆け込みで。「2」である。当たり前なんだけど「2」にはきちんと「2」をつけて欲しい。その意味でちゃんと「2」がついてるので、こういうのは嬉しい。「3」には「3」をつけて欲しい。とにかく「2」です。2と言ってるだけあってきちんと続編です。舞台は4年後。今回は主人公の妹の話。夢を見て夢の中で起きたことが現実に影響を及ぼす。この夢の描写のざらざらした映像が素晴らしかった。8ミリフィルムで撮ってるらしいけど、ものすごく粗い映像の中で、かなりおぞましいことが起きて、これがものすごく独特の悪夢感を生み出しててよかった。抱えている心の闇とどう対峙して乗り越えるのかをエンタメとして視覚的ににしっかり押さえてやってくれるのがいいです。わかりやすいエンタメホラーだけど、しっかり「2」をやっててこれはかなりいいものでしたよ。あと前作からの主役フィニーくんは「ヒックとドラゴン」のヒックだよね。成長してヒックな顔になってた。メイソン・テムズ、いいですね。そして「スプリングスティーン孤独のハイウェイ」。これ見たい、見たいと思いながら、結局最終日まで見れなくて、でもギリギリ劇場で見れてよかった。スプリングスティーン好きだったんですよー。中学時代に尾崎豊にどハマりしたけど、それより先に聴いてたスプリングスティーンで、尾崎の初期楽曲はすごく影響受けてるなーそっくりじゃんって思いながら聴いてていつしか尾崎に落ちてたんだった。映画よかったですよ。ただ、恐ろしいほど地味な映画で、クィーンとかいろいろある最近の音楽映画の中でも、最地味に位置づけされるような映画で、ボーンインザUSAでブチ上がる展開とかあるんだろうなと思ってたら、いい感じに曲が仕上がったけどお蔵入りになる話しだったりして、基本は「ネブラスカ」という全体を通してすんごい暗いアルバムがどうやってできたかの物語で、あれって自宅でカセットデッキで録ったデモテープで作ったんですね。あとボスと呼ばれるアメリカのマッチョのシンボルみたいな人が実はすごいトラウマを抱えててって、映画としてはすごくいい。けど、ものすごく地味っていう。そういう映画でした。ボーンインザUSAも最初はあんな暗い曲調の歌だったんですね。最初の暗い曲調だと歌詞の内容も、もっとすっと入ったにちがいない。けどあのままだと、こんな有名な曲にはなってなかったんだろうな、明らかに。そんな不思議な2本立て。シンクロが止まらない不思議な体験でした。終わったらど深夜で、翌日寝不足!

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 3年前にちゃんと1も劇場で見てました

スプリングスティーンの劇中でけっこう繰り返し「バッドランズ」のシーンが流れてて今年ちょうど見ておいてよかった。

 

 

せいけつがすぎる

「消滅世界」を見た。

なんか漂白されきった世界に圧迫される映画だった。ずっと、なんか白い。合理性と正しさの概念が行きすぎて、清潔な世界を生んだ近い未来の話。とにかく薄気味わりいほど白くてそれが窮屈に圧迫してくる映画だった。今の感覚で言えば、価値観がちょっと違っている世界の話。夫婦間の性行為が不謹慎とされる世界。夫婦間の性行為が近親相姦とされる。子どもは人工授精で産むのが当たり前。家族という概念はある。しかし恋愛と家族は切り離される。家族は家族、恋愛は恋愛。その方が合理的だとされ、それが常識となっている。恋人は家の外に持つか、仮想現実の中でするもの。合理的考え方が概念を変えて、いつしかそれが常識になる。それが突飛なモノではなく、極めてさらりと背景として描かれるのがこの映画の薄気味悪さだ。「ない」とは言えない近未来としてそれがある。描かれる日常そのものは今とほとんど何も変わらない。いまあるありふれた日常を描きながら、その背景にある常識だけが、ちょっと違っている。物語の主人公は、夫婦間の性交渉で産まれた子ども。この世界ではタブーとされる存在。学校では気持ち悪いといじめられ、そのことが本人のコンプレックスとなる。絶対に母のようにはなりたくないと心に誓って生きる。そしてこの世界の常識の中で結婚し、外に恋人も作り、さらに合理的で持続可能な生活を求め、よりクリーンな実験都市に暮らし始める。合理的で正しい価値観が映画の中で進化していく。そこに見えてくるものは何か。もちろん突飛な話ではあるけど、なくもない話しにも思える。現に自分達が常識と思っているものが、世界の常識ではないという事実もある。実際生殖と子どもの養育が結びつかない家族の実例もあって、牛の価値が最も重要視されるアフリカの村では、女性でも牛を持っていれば妻として男性を家に迎え入れるらしく、別の肉体的パートナーである男性との間に作った子どもを妻である男性と育てるのだという。そんな部族もいることを文化人類学の本で読んだ。わたしたちが常識と思っているものは、まったく常識ではないし、例えば自分が子どもの頃に見ていたいわゆるふつうの家族像と、いまの日本の家族の形もやはりそれなりに変わってきている。映画で描かれるような概念が浸透するかはわからないが、世界は少しずつ白くなっている気はしている。どんどん合理的で清潔でクリーンになっていく世の中が、もっともっと白くなりすぎて消えちゃうんじゃないかって思う薄気味悪さの中で、コンプレックスを抱えた主人公が、より常識的でありたいと渇望して今の感覚では最もタブーとされるところに流れついていくが、常識が変わるとその中で思う個々の正しさの概念も変わっていくな、と、かなりビターな後味でながら、そのいびつさこそがやはり人間よねと思う映画でもあった。とにかく常識なんてものに従って正しく生きてさえいればいいという思考停止は実は恐ろしいですよって映画だ。「コンビニ人間」「信仰」という小説を読んだことがある村田沙耶香が原作だというのでさっそく本を買ってみた。またきっとえぐられるのだろう。

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