まんげつにならん

「月」を見た。

目を背けてはいけないことについての映画だ。本当はあることはわかっているのに、見ないようにしようとしていること。それを突きつけてくる。気持ちのいい映画ではない。実際に起きた事件をもとにしている。口にするのも恐ろしい事件だ。しかしなぜそんなことが起きたのか。それに向き合おうとする。多かれ少なかれ、誰しも心の中にあるであろう、本音の部分、それをえぐる。本当のことなんてわからないけど、本音の部分では、きれい事を取っ払って考えると…それを対話の中でえぐり出す。他者として見ていた人が、自分かもしれないということを映像で表現した演出はうまいなと思った。病室に横たわり、口を開くこともできず、10年以上寝たきりで動かない患者を自分と同一視する。人間ではないものは排除していいということを訴える青年に自分が重なる。こういう何気なく恐ろしい演出はとてもいい。しかし、映画全体がまるでホラー映画なのは、どうなのだろうか。あまりに映像全体がおぞましい。蛇、蜘蛛、魚の骨、飲み干すワインには思わず失笑してしまった。全体がもっと淡々と無機質であればもっと闇が際立った気がした。いや、しかし、こうやって映像をおぞましくすることで、テーマを少し薄めたのかもしれない。そのくらい描こうとしているものはきつい。そうか、薄めるためにおどろおどろくしたのか。なるほど、そうか。

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