うしなわれしもの

「宇宙探索編集部」を見た。

時代に取り残されたものについての映画だった。ノスタルジックな気分にあふれた楽しいコメディ映画でありながら、UFOや超能力、怪異現象をめぐるオカルト映画でもあったりして、なかなか「こういう映画」と説明しにくい映画だった。ジャンル的にはいわゆるロードムービーになるのだろう。旅をするのは廃刊寸前のオカルト雑誌の編集部の面々と、謎の村で出逢う「頭に鍋をかぶった青年」という面子。さながらポンコツ西遊記のような映画だ。とにかく不思議な映画だった。描かれるのは中国の発展してない部分。近代化から取り残された村。北京の片隅のある出版社も発展してない場所にひっそりと存在している。かつてUFOブームというのが中国にあったらしい。80年代90年代とUFO雑誌が売れたのだという。いまもそのUFOを求める自称学者という、うだつのあがらない編集長。妻は娘を連れて家で出て行き、その娘は数年前に亡くなったという。彼は失われし者の象徴のような存在である。そして時代にも取り残されている。そんな彼が時代に取り残された場所を巡り歩いて、あるはずのないものを探し求める。愉快な道中はおかしくもあるが、そこに漂う郷愁感は、なんとも哲学的である。驚くのは、この映画が映画専門学校の卒業制作だということだ。なんという完成度の卒業制作だ。

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