はにはさまってる

「12日の殺人」を見た。

何かが歯に挟まったようなもどかしさを味わう映画だった。つまりとてもよくできた映画だ。それを描こうとしているのだから。フランスの山に囲まれた静かな町。そこで起きる殺人。21歳の女性が生きたまま焼かれる異常な犯行。なぜ殺された?誰に殺された?警察の捜査が始まる。プロットだけ見ると犯人を捜すミステリーである。しかしそういう映画ではない。異常な犯行を捜査する刑事達の日常とも言える人間描写に焦点を当てた、言うなればお仕事映画である。男社会のお仕事映画と言ってもいいかもしれない。この映画の真ん中には男というものが、ずんと腰を下ろしている。真摯にとてもマジメに捜査をする。執着していると言っていいほどに真剣に捜査する。しかしふつうの刑事ドラマとはどこか違う。仕事として捜査しているような変な日常感がある。遺族に事件のことを話す妙な緊張感とうまく言えないもどかしい感じだったり、取り調べも明らかに段取りが悪かったり、参考人に痛い指摘されて頭を抱えたり、報告書作成に追われたり、残業代の心配をしたり、妻との離婚に悩んでいたり、事件の外側がクローズアップされる。事件の真相に辿り着けないモヤモヤが淡々と描かれる。手を抜いているわけではない。でもさまざま要因が絡んで真相が見えてこない。たどり着いているのかもしれないけど、それが不問になっているのかもしれない。実話がベースになっている話。真相はもちろんわからない。わからないもやもやを追体験するような、心にひっかっかる映画だった。

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