こどくなかいぶつ

「笑いのカイブツ」を見た。

好きに全振って生きていく地獄を見る映画だった。「好きなこと」で生きる。人が見たらうらやましくも思える生き方。打ち込めるものがある、熱中できるものがある。それだけで人生は輝く。本当にそんなもんだろうか。人生を賭けてやりたい何かを見つけて、本当に全力でそれに全振ってしまったら、自分の人生のすべてをそれに賭けてしまったら、そこに待ってるものは何か。その一端を見せてくるような映画だった。人を笑かしたい。それに賭ける。圧倒的な熱の込め方。徹底的に研究し、1秒の時間も無駄にせずネタを書き続け、お笑いを生み出すために生きる。そんな彼の姿に感化され応援する人が現れる。理解者が力を貸してくれる。彼のことを羨ましいと思う人がいる。しかし彼自身は常に苦しみ続ける。苦しみながらただ生み出し続ける。彼は人と協調することができない。常にストレートな物言いをして、どんどん行き場を失っていく。情熱を注いで作り続けているものを活かす機会を失っていく。生きづらさだけがつのっていく。これは地獄だ。好きなものが呪いになっていく。とてつもない闇に飲まれながら、それでもあがく。まさにカイブツの映画だ。それにしても周囲に現れる彼に力を貸してくれる人たちが素晴らしい。決して見捨てない。やんちゃなホスト崩れ役の菅田将暉、売れっ子芸人役の仲野太賀、この2人にめちゃくちゃ泣かされた。今年の映画初泣きだった。この2人の優しさにもすがれない。すがることができない。孤独なカイブツの哀しさに胸がつぶされそうになった。

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