またべすときゅう

「ポトフ 美食家と料理人」を見た。

涙が止まらない映画だった。なんでこんなに泣いているのか、自分でその理由が説明できないくらい泣いてしまった。エンドクレジットが終わったら泣き止むだろうなんて思っていたら、まだ涙が止まらない。外に出て歩いている時も涙がまだ流れて、寒い外の空気で頬の涙がカラカラに乾いてしまう。それくらい泣いた。ラストの短い会話のやりとり。そこで突然泣いた。本当に短い最後の会話のやりとり。たぶん20秒くらい。その会話に涙が止まらなくなった。美食家の夫と料理人の妻。とは言え長く結婚はしないまま料理を生み出し続けた2人。美食家が考案し、料理人がそれを再現する。ひたすらそれを続けてきた。これは仕事についての映画だ。仕事というよりも何に人生を捧げるか、その使命の映画と言ってもいいかもしれない。プロとしての尊厳、あり方。誇りを持って生きるとは何か、そして良き人生、幸せとはどこにあるかという映画でもある。先日見た「パーフェクトデイズ」にも通じるテーマだ。あれも人生と仕事に対する向き合い方についての映画だった。ポトフという映画、ほとんどセリフはない。その辺も「パーフェクトデイズ」に通じる。特に前半はひたすら無言で料理をするだけ。ただ黙々と作る。厨房にいる人が完璧に自分の仕事をこなす。そしてそれを食べる人の表情。そこに言葉はいらない。生み出された料理は芸術の域に達している。言葉よりも雄弁に所作や表情が全てを語る映画だ。実に静かな映画ながら「ブルージャイアント」に匹敵するくらいなにかひつのことに情熱を注ぐ映画でもある。ただ熱い気持ちを後押しする映画ではない。たぶんそうあろうとしている人の心に刺さる映画になっている。何かに打ち込んでいる人ほど何かを受け取れる映画なのかもしれない。少なくともわたしには刺さりまくった。何も語らない、静かな傑作だった。わたしにはそう見えた。それでいいのだ。

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