みなおしてみたら

「オアシス」4Kレストア版を見た。

20年ほど前に見てとことん落ち込んだ映画だった。なのでこの映画は良い記憶として残っていない。当時、見ていて途中でつらくなって、最後まで見たけど、気分が落ちて立ち直れなくなった。その頃のブログを読むとずっと何週間もずっと咳が止まらなくて、熱もずっとあって、体調が優れず、仕事は少しずつ忙しくなってきた時期で、そんなふうに忙しくなる毎日になかなか対応できなくて、とまどっていて、精神的にも不安定で、大好きだった黄金町の「日劇」が閉館したり、心身共にあまり良い状態ではなかったようだ。そんな映画を映画館でリバイバル上映をしていると聞いたので、約20年ぶりに見直してみた。素晴らしい映画だった。交通事故で人を殺した罪で服役していた青年と、事故の被害者の娘で重度の脳性麻痺を持つ娘のラブストーリー。こんなにいい映画だったのか。冒頭こそ得体の知れない野良犬みたいな主人公に困惑するし、2人の最初の出会いなんか最悪で、いきなり襲うし、うわってなる。でも中盤で2人が心を通わせて初めて外に出るところで涙があふれてきて、そこからは最後までほとんどずっと泣いていた。涙が止まらなかった。こんなに美しい恋愛映画を見たことがない。2人だけにしかわからない世界のはなし。周囲の人間からは徹底的に蔑まされ、誰にも必要とされていない2人が、お互いがお互いの存在だけを必要とし、そこで生きていく。見事な恋愛映画であり、人が生きる意味とは何かを問うようなとてつもない映画だった。生涯ベストに入る一本だと思った。なぜあの頃、この素晴らしさに気がつかなかったのか。おそらく余裕がなかったのだと思う。だから映画の冒頭の印象だけを引きずって、その印象だけを心に残して終わったんだろう。この映画に出てくる周囲の人たちと同じだ。たぶんそういう決めつけだけで見てしまったのだ。時間をおいてみることで受け入れられるものがある。先日読んだ本もそうだった。「未来をつくる言葉」という本。数ヶ月前に読んだときは、あまりにも言葉が重たくて、書いてあることが自分にとっての負の感情を刺激してきて追い詰められる思いがして途中で読むのをやめてしまった。先日、ふと読みなおしてみたら、すんなり読めた。時間を空けたらなんてことなかった。いやむしろこの本に書かれた思索に心地よさすら感じた。あの呼び起こされた負の気持ちはなんだったんだろう。とにかく時間を空けみることで自分の中で何かが変わるんだろう。ここのところそうやって、なかなか向き合えなかったものに向き合うようなことをしている。10年本棚に刺さったままでなかなか読み出せなかった「九月、東京の路上で 」も読んだ。衝撃的だったけど読まなくていけいない本だった。自分の苦手に向き合い直す。いまの自分はそういう時期なのかもしれない。

www.youtube.com