ばーじんそうしつ

アントニオ猪木をさがして」を見た。

まさか猪木で泣くとは思わなかった。涙が止まらなかった。なんで泣いているのか自分でもよくわからなかった。アントニオ猪木。まったくわたしは通ってこなかった道だ。プロレスもほとんど見たことがない。80年代に子ども時代を過ごした。ある程度、ド直撃世代だったはずだけど、わたしの子ども時代はアニメに費やされてプロレスには1ミリも興味を持てなかった。この間、たまたま読んだ新書で猪木に少し興味を持った。クセの強い人たちを虜にし、その人達の人生を変えるほどの存在、それが何なのか知りたくなった。そしてこの映画を見てみた。ふーんと思いながら見ていたけど、中盤くらいから涙がこぼれてきて、終わる頃には嗚咽をもらしながら号泣していた。1週間ほど前まで何の興味もなかった人だったけど、なにが人を惹きつけるのか、この人の魅力とは何なのか、その一端が少しだけわかった。そして泣いた。信じられないほど泣いた。まさか猪木で泣くとは思わなかった。まっすぐなんだ。とにかくこの人のまっすぐさに脳天をぶちやぶられた。何の計算もしないでまっすぐ進む、そしてまっすぐさを、そのままさらけ出す。その姿に泣いた。たぶん、ものすごい猪木ファンだと思われただろう。まぁまぁ人の入った劇場で、見ている他のひとたちは、あまり泣いてはいないようだった。こんな猪木は当たり前に知ってるからだろう。わたしはたぶんその劇場にいる誰よりも激しく泣いていたと思う。初めて猪木を喰らったからだ。猪木バージン喪失だ。そして劇場を出て思い出したことがある。25年前、ずぶの素人でデザインの経験も何もないわたしに本のデザインを頼んできた出版社、サンクチュアリ出版。全員20代で、無名で、無謀で無鉄砲な若者たちの集団のような会社だった。98年、猪木が引退するとき、引退記念本を作ったのは彼らだった。自分の引退記念の著書を、無名の若者達のよくわからない出版社に作らせた。挑戦を後押しする人だったんだ。そんなところまでぶれてなかったんだ。25年前に起きていたことの意味がようやくわかって、劇場を後にしながらまた泣いた。まっすぐなものにわたしは弱い。こんなまっすぐな人がいたのか…。衝撃だ。

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