なくしたきおく…

記憶がない。3年以上ぶりに大勢の人が集まる懇親会的なものに参加した。とにかく忙しいのでそんなところに行ってる余裕はなかったのだけど、誘われると断りにくくて、顔だけでも出すかと、片道1時間半かけて行ってきた。ほどほどで帰るつもりが、ほどほどですむわけもなく、せっかく都内に出たんだからと飲み歩いた。二次会の途中までは記憶があるものの、その後どうしたのかはよく覚えてない。途中が完全に抜けていて、最後は道に迷って、夜道をさまよっているところで「どこ、ここ?」と意識を取り戻し、なんとかタクシーを拾って真夜中に家にたどりついた。スマホを見ると新宿で意識不明でさまよった店の記録が残っており、みんなと分かれた後、ああ、そういえばKさんと久しぶりに会って話したんだったとか、断片的な記憶が蘇ってきた。無意識にせよ、行った店の記録を写真に残す習慣がこういうときに大いに役に立つ。そしてスマホは便利だ。記憶がなくなるまで飲むのはいつものことだけど、最近はものをなくさなくなった。道で寝なくなったからだ。道で寝ていた頃はよくものをなくした。なくした物コンテストがあればおそらく上位に入る。そのむかし、結婚式に出席するのに、そのご祝儀を準備してカバンにいれたまま、生活費も含めすべてなくしたことがあった。キャッシュカードもすべてなくしてしまって、お金をもたずに結婚式に行った。たしか結婚式に来ていた人にご祝儀も二次会のお金もすべて借りたのだった。編集者をしていたころ、とある評論家の先生がなかなか原稿を書いてくれず、もう明日の午後には原稿がないと終わるとなって自宅に押しかて書き上がるまで帰りませんとねばって書いていただき、ようやくもらった原稿を持ったままお祝いだと飲んでて、その原稿をなくした。カバンごと盗まれた。原稿は手書き原稿でデータなんかない。翌日、別の駅でカバンの中身が散乱しているのを見つけて落ちてた大量の名刺を見て連絡をくれた人がいて、道に散らばった原稿を回収に行ったこともあった。もちろん財布やカードはなくなっていた。いい思い出だ。キャッシュカードをなくした翌日、通帳と印鑑でお金を下ろし、そのまま通帳と印鑑を持って飲みに行って、通帳と印鑑をなくしたこともあった。何日連続で財布をなくすか選手権みたいな毎日だった。ラーメンを食べ、始発で帰ろうと思って、始発までの30分ほど時間をつぶそうと道に座って少しだけうたた寝している間に財布をなくしたこともあった。あの頃、よくものをなくしたのは道で寝ていたからだ。路上で寝ると確実にものがなくなる。道で寝てはいけない。20代で学んだ一番大きなことだった。道で寝る習慣を断ってからものをなくさなくなった。ただし相変わらず記憶はなくす。とりあえず二日酔いの今日を生きよう。

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