せいぎはこわいよ

「聖地には蜘蛛が巣を張る」を見た。

正義とはなにか?って映画だった。イランの聖地で起きた16人の連続殺人事件を基に作られた作品。娼婦だけを狙った殺人鬼の犯行と、それを追う女性ジャーナリストの取材が交互に描かれる。大胆に犯行を繰り返す犯人側の自由に動き回る開放感ある描き方に反して、事件を追う女性側の空気は圧迫的でつねに息苦しい。この土地では犯人が正義で、それを暴こうとする、しかも女性がというのは歓迎されていない。明らかにそれはおかしい、と見ている側は思うけど、違う価値観が支配する土地ではそれがまかり通る。社会的な悪とされる娼婦を排除する殺人鬼は言わば英雄視され、本人もそれを自覚しながら犯行を続ける。英雄なる存在の危うさがここにある。戦争の英雄しかりだ。誰かにとっての英雄は誰かにとっての悪夢だ。見る視点が変われば英雄の存在は全く違ったものに見えてくる。最後にうつされる子どもへの価値観の継承がまた怖い。いつのまにか自分が無自覚に加害者になる可能性もある、正義という名の下に何かを行うということはとても恐ろしいことであるかもしれないのだ。

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