ぼんようなあく…

「あしたの少女」を見た。

いまそこにある巨大な闇を見る映画だった。とにかく恐ろしい映画だった。ひとりの少女の死をめぐって殺人機関とも言える現代社会のあらがいようがないシステムそのものを描いている。韓国で実際に起きた女子高生の自殺事件を元にしている。死を選択した女子高生、そのことを捜査する女性刑事。前後半できっちり分けて2つの視点で女子高生を取り巻く世界を描く。冒頭のシーンで活き活きとダンスを踊る主人公。ダンスが得意で、明るくて、正義感が強くて、きちんと主張を言う自信にあふれた女子高生。ただそれが働き始めた瞬間、社会に触れた瞬間にすべて奪われる。それでも必死に食らいつき、その中で生きようとするのだが、抗えない闇に飲まれてしまう。その闇の正体を掘り起こすのが二幕目だ。無自覚に人を殺す凡庸な悪のシステムがあぶり出されていく。そこで一人の人間はいったい何と見なされされているか。これはフィクションではない。目の前にある現実だ。隣の国の話してとして安心して見ていられるものではない。これは今目の前にある現代社会そのものだ。恐ろしい傑作だった。

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