たてものをでた

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「アマンダと僕」を見た。

何度か予告編を見て、おおむねこういう話なんだろうなと思っていた通りの話ではあったんだけど、予告のぼかし方がうまかったのか、肝心な部分がかなり衝撃的で、そのことによって全然違う見え方になる映画だった。主人公はその日暮らしみたいな仕事をしている青年で、姉と彼女の小さな娘が近所で暮らしていて、恋人らしき人もできて、それなりに幸せな生活を送っている。が、姉の突然の死をきっかけに生活が一変する。それで始まる小さな娘と若い叔父さんの疑似家族のような生活。こう書くと「クレイマークレイマー」的な慣れない子育てに追われるドタバタ映画になりそうなんだけど、ちょっと違っていて、そういう大変な日常みたいな分かりやすい展開はほとんど描かれない。もっと穏やかで、何でもない、だからこそ何とも違和感のある日常が続いていく。ただ大きな喪失感と消えない傷が確実にそこにはあって、そこから一歩踏みだそうとするまでの話。それを大きなドラマ展開で消化せずに、とある別のことに感情を乗せて終わらせている。それは姉が生きていたときに行くことを約束した場所で、そこで娘がつぶやくセリフは、一番幸せだった瞬間に母と娘で話題にした本のタイトルだ。なんともうまくできている。彼らにとって絶望の始まりの場所である「公園」という場所が、終盤で別の関係の修復に使わることや、自転車での移動シーンの妙な緊張感や、窓を使った外と中の演出など、静かで巧みな演出で感情をじわじわ刺激してくる映画だった。しみました。