りんごはおかれた

オッペンハイマー」を見た。

恐ろしい映画だった。世界にあってはいけないものを作ってしまった男の罪についての映画。パンドラの箱を開けてしまった男が背負ってしまったもの。その描写がとにかく怖い。心理的に追い詰められていく。とにかくこの映画、音の使い方がいい意味で最悪だ。音の不快感がすごすぎる。そして矢継ぎ早につむがれる映像と説明なく流れ込んでくる情報量。全てがドライブしていく。開けてはいけない扉が開く。その瞬間の音がとにかくすごい。音使いがとんでもない。この映画は劇場で見ないとダメだ。この音を体験して伝わるものをしっかり感じるべき映画になっている。そして構成が見事だ。冒頭のりんごのエピソードがずっと効いてくる。オッペンハイマーがちょっとした怒りから、教室において帰った青酸カリを仕込んだりんご。だれかがそのリンゴを食べるかもしれない。誰かが死ぬかもしれない。それを教室にたったひとつおいてきただけで高まるアドレナリン。この緊張感がとんでもなくやばい。たった1人を殺すかもしれないりんご。その予感だけで罪の意識が加速する。そのりんごは払い落とせた。制御できた。しかしその何百万倍の殺傷能力を持つ兵器を制御できない恐怖。そんなものを生み出した罪の意識。とてつもないものが流れ込んできた。そんなりんごが存在する世界にわたしたちは生きている。

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