なんかいなきょり

奈良原一高 「肖像の風景」 展を見た。

奈良原一高 、名前は知っている。ただ写真をちゃんと見たことはなかった。一昨日飲んだカメラマンが「おれ、奈良原一高の肩もみをしたことがある」と自慢げに話していた。なにがそんなにすごいのかわからなかったが、肩もみを自慢できるくらいすごい人なのはわかった。そして写真を見た。肩もみを自慢したくなる写真だった。展示はすべてモノクロの人物写真。名の通った人、無名の人、色んな人の写真が並べられている。まず目に入るのが、赤羽賢司という天文学者の写真。顔のアップ。ただし顔の左半分が画面からはみ出している。何かが欠けている。そんな写真が多かった。次の写真では口から下が写っていない。下から見上げたその人の頭の上には笠のように気球のようなものが被さっている。欠けて、足されている。図書館員、藤田晴子の写真は図書館での後ろ姿と、居間でピアノを弾く姿。居間には外から光が入っていて人物はほとんど影である。どちらの写真も顔が見えない。シェフの蒲田昭男は、横向きでコック棒を被ったシルエット。顔のディティールは写っていない。遠景でほとんど人物が豆粒な写真もある。すべての写真に人物との距離感を感じさせる何かがある。距離感そのものが作品になっている。そんな印象をもった。そしてそれがその人の個性をうっすら浮かび上がらせているように見える。素人を撮るのは難しい。この間、自分が初めて撮られる側に立ってそう感じた。この写真の距離感はどう取ったのか、そんなことを考えながら見た。撮られ慣れてないだろう人たちの写真がとても面白く見れた。そのあとラジオの収録があって東京FMへ行った。人生初のラジオ出演。控え室で待っていると、カメラを持った人がやってきて、「待ちの瞬間を1枚」と写真を撮られた。緊張で引きつっただけの人が写っていた。やはり写真を撮られるのは難しい。

www.jcii-cameramuseum.jp