なぽれおんおれん

「ナポレオン」を見た。
まさかの純愛映画だった。ナポレオンについてあまり詳しくないので史実通りなのかは知らないけど、冷徹で残酷で野心家である表の顔と、実は支配されたいという欲求をあわせ持ったコントラストにものすごく人間くささを感じさせる映画だった。一人の人間の実は捉えどころがない複雑さ。共依存ともいえる妻の存在。エジプト遠征中に妻の不貞を知り、飛んで帰って妻を家からたたき出す。でもすぐに招き入れる。そして怒りをぶつけ服従させようとする。しかしその直後には立場が逆転し妻に服従させられ、それを受け入れる。支配しつつ支配されたいというアンビヴァレントな人間の内面。そこがじつに印象的だった。そしてこの映画の画面のゴージャスさ!まるで中世の絵画の世界がそのまま映画になったような圧倒的なルックの豪華さ。そしてマリーアントワネットのギロチンに始まる強烈に汚いパリと民衆の熱狂。そして殺戮の怖さ。パリの市街地で大砲をぶっ放すシーンはまじで背筋が凍った。人殺しの無残さ残酷さ怖さを描く。権力を握る者にとって戦争はゲームと同じで人間はコマでしかなく、それは人ではなく単なる数字であるという戦争の無機質な暴力性。それは今の世の中でも変わっていない。権力を握っている者にとって人はただの数字だ。最後にそれぞれの戦場で死んだ人の数だけを見せて終わるのも印象的だ。強烈な映画だった。

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