いいしめくくりだ

「ケイコ 目を澄ませて」を見た。

これを見たのは去年の暮れで、これが2022年のシメ映画でした。最後に来て、年間ベストに推したくなるほどすごい映画を見た!耳の聞こえない女性ボクサーの映画。そう聞くとセンセーショナルでドラマチックな熱いスポーツものになりそうだけど、これが意外なほど淡々とした映画で、それがとても素晴らしい映画だった。物語のための映画ではなくて、世界そのものを切り取ったような作りの映画。主人公のケイコが鏡を見ながらシャドーしていると、画面の外側では減量に失敗した別のボクサーを怒鳴りつけるコーチの声が響いている。その怒鳴り声は物語には無関係で、主人公のケイコには聞こえてない声だ。物語とは無関係な世界がそこにある。この映画は物語の外側が意識的に描かれている。それはコロナ禍の街の風景だったり、同居している弟とその彼女の話だったり、極力説明は少なく、当たり前に主人公と関係のない世界がある。ハンデを背負ってボクシングをする特別な存在である主人公にとっての、特別とはほど遠い日常。全く物語的ではない現実。こんなボクシング映画見たことない。淡々としつつも強烈に訴えてくるものがあって、こういう映画こそ劇場でじっくり見たい映画だよなーと。ラストに彼女が何かを取り戻すきっかけになるある人物との出会いがあるんだけど、それが本当にこの映画が描いていることそのものとリンクしていてぐっときた。良い映画を年の最後に見た。

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