よるになるとなく

「夜、鳥たちが啼く」を見た。

すごい!入り口と出口で完全に登場人物の印象が変わる映画だ。まるでミステリー映画のような、謎めいた始まり方をする。プレハブに暮らす小説を書いているらしき暗そうな男。その男は自分の家を明け渡し、小さな男の子と美人の母を自分が住んでいた家に無償で住まわせる。男はなぜ家をただで貸すのか?この2人の関係性が何なのか、それがわからないまま話が進んでいく。徐々に男が何者なのかがわかってくる。嫉妬深くて、ねちっこくて、責任感がなく、執念深くて、人間として未熟ながら、小説の才能はあり、しかし2作目が書けない男。隣に越してきた女性とは知り合いではあるようだけど、なかなか関係性が見えてこない。徐々に関係が深まる中で、その正体がわかってくる。このミステリアスな構成が実に見事だ。暗くてじめっとした画面の空気感に、夜になると響き渡る近所の保育園で飼育されている鳥の仰々しい鳴き声。いやなことが起きそうな、緊張感のある空気がずっとはりつめる。でも、この映画、暗くて鬱々としていて、恐ろしい緊迫感を漂わせたまま、驚くことにすごくハッピーな着地をする。最後に示されるのは新しい家族の形だ。相反する性質を持ったまま、共に生きていく道をみつけるまでの男女の話。暗くてしょうもない男に見えた彼が、最後に見せる表情がよかったです。なんとも言えないところに連れて行かれました。ボロボロのプレハブ、生活感の塊のような平屋の一戸建て、舞台がとても印象的でした。

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