たーいむすりっぷ

恋する惑星」4Kレストア版を見た。

なんとこの映画を劇場で見るのは28年ぶりのことらしい。そして28年前よりも混雑した完全満席の劇場の最前列の隅っこの席で見た。28年前、ものすごく影響された映画だ。あの頃、何者かになりたくて、何者にもなれない気しかしていなくて、せめて自分だけがわかる何かくらいはみつけようって、必死にその何かを探していた。わかりやすいものに反発して、とがったものを求めていたはずが、影響されていたのは、こんなにもわかりやすいものだったんだな、と28年ぶりに改めて見て思った。今も昔もまったく深くない自分に少しがっかりする。それでもなんとか生きてこれたんだから、わかりやすいものに影響されつづけることだって立派な能力なんじゃないかなと思いながら、赤坂で友人がすごくおしゃれなバーで香港映画音楽のDJをするというのでいってみた。28年前、恋する惑星を一緒に見に行った友人だ。その頃見ていたテレビ番組に「アジアンビート」という深夜のアジア音楽番組があって、その番組で「恋する惑星」が紹介されていて、宣伝のために出ていた金城武がまだ日本語に不慣れで敬語が話せないのをユースケ・サンタマリアに散々突っ込まれていた。初めて金城武を見たのは映画ではなく、その番組のそのコーナーだった。「あのさーパイナップル好き」っていう劇中の金城武のセリフがなんかとてもかっこよく感じて、その頃一目惚れしたマクドナルドのバイトの店員に同じセリフを言って近づこうしたことがあった。とても気持ち悪がられたことだけを覚えている。28年前の自分は本当にどうかしていたんだと思う。友人のDJイベントでもいちばんすみの席に座ってぼんやりしていた。しゃれたバー過ぎてどこに座ったらいいかわからなかった。気を遣ってくれたのか、話しかけてくれた人がいて、せっかく話しかけてもらったから、こちらも一生懸命話そうとするんだけど、なかなか話題をつなぐのが難しくて、言った瞬間に「しまった」って思う「あのさーパイナップル好き」と同レベルの質問をして、そこで会話が終わらせてしまった。相変わらずだ。それでもマイケル・ジャクソンが好きだという人とマイケルの話をしたのは、なんとかうまく会話のキャッチボールができた気がして、上出来と思えたので、そこで切り上げて店を出た。悪い記憶で上書きしないうちに早めに切り上げるのが正解だ。夜は自分の写真展をやってるゴールデン街のこどじに行った。展示しているのにまだ2回しか店に行けてない。ごめんなさい。年に一回開催の写真展も19年目。改めて自分の写真をまじまじと見たら28年前に好きだったものにわかりやすく影響されてるんだなって思った。いつのまにか時間だけが過ぎてしまって、相変わらず苦手なことが苦手なままだけど、色んな事が少しだけ影響して唯一無二のいまの自分を作ってる。恋する惑星の後にシャレたバーで酔う自分、DJしてるのがそのとき一緒に見た友達、そして新宿で自分の写真展をやっていて、アメリカから来たという青年と政治の話をしている、もちろん日本語で。あの頃には考えられなかった28年後の未来をいま生きてるんだな。

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