のうのひろうかん

「戦争と女の顔」を見た。

映像がとにかく美しい。落ち着いたトーンながら、色合いはとても鮮やかでやわかくて、緑と赤を印象的に使った美術がとても印象的だ。美しい画面の中で繰り広げられるのは、静かで残酷な日常の地獄だ。第2次大戦の激戦区に従軍し生き残った2人の女性。戦場の描写は一切ない。戦場の地獄がどんなものだったかは、語られるセリフや表情、そして止まらないPTSDの症状から推察するしかない。そんな地獄を生き抜いた先にある日常という名の地獄。始まった瞬間から流れる不穏な空気。とんでもないことが起きているんだけど、描写自体はいたって普通で、とても美しくもあるという。見えているものと起きていることの乖離がなんともすごい。それでいて、考えられないようなシチュエーションで見たこともないような描写をするベッドシーンの異様さだったり、着てる服の色がそのシーンで誰が主導権を握っているかを提示していたり、とにかく繊細に、でも強烈に画面が作られていて、これはとんでもないものを見てしまったと思って劇場をあとにした。地味で静かな映画なんだけど、情報処理にメモリーを取られて脳の疲労感がすごかった。

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