まちがいないやつ

「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」を見た。

なんていい映画!!幸せな気持ちにしかならない映画だった。もう始まった瞬間から「名作確定!」を予感させて、そしてそのままラストまで、ずっといい。すごくいい。こういう映画を観るために映画館に通ってるよなって思う。舞台は1970年。いま作った映画なのに、きちんとそこに1970年がある。ユニバーサルのロゴが、ミラマックスのロゴが、その他のロゴもすべて当時の雰囲気。そしてフィルムらしい質感、少し音にノイズが入る感じ。始まった瞬間から、午前十時の映画祭を見ているような「間違いない」感じがある。そしてそれを裏切らない。タッチはクラシカルながら、テーマはすごく現代的でもあり、普遍的で多面的。クリスマスシーズンで誰もいなくなった寄宿学校に取り残された3人。それぞれが大きな孤独を抱えた3人。世代も人種も違う彼らが過ごす短いようで長い時間。たった3人の小さな話なのに、その時間のひとつひとつが、じつに豊か。はじめはお互いを阻んでいた壁が、少しずつ取り払われていく。大きなドラマはない。小さなきっかけと、ちょっとした会話で相手に関心を寄せることで、少しずつ距離が近くなっていく。とても心地がいい。そんな幸せな時間を味わう映画だ。終わってみると、そこにあった時間の全てが愛おしく感じる。何も大きな事は起きていないのに、じつは世界がひっくり返っている。人生が変わるとはこういう些細なことなのだ。それを味わう。なんていい映画なんだ。十代の多感な危うさと、でもじつはすごく人を思いやる心があって、そして孤独を抱えていてという超複雑な生徒役を演じた新人ドミニク・セッサが素晴らしかった。ポール・ジアマッティとセッサ、この2人が画面にいるだけで映画が輝いて見える。ずっと見てられる。

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