たにんごとでない

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「ファーザー」を見た。

すごいものを見てしまった。認知症についての映画だけど、ただ認知症を描くんじゃなくて、認知症そのものを体感させる、とてつもない作品だ。今年に入ってから認知症の本をけっこう読んでいて、知識としてある程度わかった気にはなっていたけど、体験するそれは、すさまじく悪夢的でホラーな世界だった。さっきまで話していたと思っていた人が別の人になっている、今までいたと思っていた場所が違う場所になっている、話す内容がいちいち違っていて真実がわからない、未来に起きることが実は過去の記憶だった、この人は誰? いま自分はどこにいる? 全てがわからなくなる悪夢のような体験。ただすべてが混乱していきつつも、きちんと父と娘の物語になっている。ただそれが実際に起きた話なのかも実はあやしいと言えばあやしいのだけど。とにかくすさまじく怖い映画ではあったけど、この悪夢的な世界を繰り返し味わう毎日も悪夢好きとしてはじつはそう悪くないかも…とか、漠然と怖がるより、その世界に触れることで、世界は少しだけ開かれるのかもしれない。いろいろ思うところがありすぎて、心が爆発しそうになったけど、とにかく見て良かった。

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