にさくつづけての

「トラペジウム」を見た。

主人公がなりふり構わずアイドルを目指す暗黒青春映画。いやディスってないですよ。そこが面白い作品でありました。わたしは好きですよこの作品。とにかく主人公、自分の願望のために人をとことん利用する。なりふりかまわない。すごいのは、そのための道筋をしっかり自分で考えていること。紙に願望を書いて、アイドルになるためのシナリオを段階を踏んで可視化して、それを小さく実行していく。他校にめちゃかわいい友達を作る。というところからミッションスタート。売れたときのためにボランティア活動の写真をSNSに残す。この周到さとあざとさ。これぞまさに成功法則じゃん!実は成功する人ってこのくらいしたたかだよ、をうまく描いている。途中書店のシーンではしっかり「成功する方法」(うろ覚えあとで調べる)みたいな成功哲学本を読んでたりするしね。徹底的にストイック、でも詰めはしっかり甘くて、そこが人間臭くてよいところではあるし、周りはみんないい人たちばかりで、つまずきながらもしっかり願望が叶えられていく展開は清々しかった。アイドルになりたくてしかたない。そこまでの衝動の源泉がイマイチ見えてこなかったけど、でもそこにひたすらまっすぐ。夢を叶える人ってのはこういう人なんだよね。これだけ要素盛々で90分ちょっとなのはすごい!よくまとまってました!このアニメ、舞台は館山周辺なんですよね。館山、中学の合宿いらい行ってないけど、その響き、懐かしいな〜。


 

 

「バジーノイズ」も見た。

こちらはアイドルではないけど、やっぱり音楽で生きていく人の映画。こちらの主人公は、デビューする気もない。むしろ誰かに音楽を聴かれるの怖いからデビューなんかしたくない。でも音楽が好き。好き勝手、自分の中から出てくる音を形にしたい。ただそれだけの青年。地味に団地の管理人をしている。この映画のすごいのは音の説得力。あんまり音楽に明るくないけど、きちんとこの人の作っている曲が特別な魅力を持った音楽であることが分かる。最初ひとりでやってた音に、誰かの音が加わる。そのことで広がっていく。明らかにそこに楽しさが宿る。そういう音の連なりをセリフで説明するんじゃなくてしかっり音でみせてくる。そこがじつによい映画だった。才能を持ってしまう。わき上がるものがある。すると周囲が放っておかない。本人の意志とは関係なく道筋ができてしまう。いわばトラペジウムの主人公の真逆である。そしてそれはそれで苦しいことであるという。作品的には終盤、主人公がお隠れになるところあたりから、急にコメディ化していった感があって、現世に連れ戻されるところは、思わず大爆笑してしまった。考えてみたら初っぱなからヒロインの暴走は相当ヤバかったりもして、音楽で食ってくためのベースには、クレイジーな誰かの強引さが必要なんだろうなと、トラペジウムと2作続けて見て感じたりしました。「なりたい!」なのか、「ただ好き!」なのか、なんとも運命の皮肉かもね…。あ、ちょっと人気が落ちたバンドマン役の奥野瑛太がすごくよかった。あと団地映画で、舞台がご近所横浜で、なんかそういうところも嬉しい1作でした!

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