まるでえんかじゃ

「枯れ葉」を見た。

なにこの慕情感は!?な映画だった。昭和枯れすすきが聞こえてきそうな、なんとも古めかしくて、心地の良い慕情感が全編に漂う。これは演歌だ。フィンランド映画なのに。不器用な男女の恋物語。お互いの名前も知らないまま恋に落ちる。男がお茶に誘い、映画に行き、連絡先を交換するが、男は電話番号をなくす。不器用にすれ違う。はじめて女の家に食事に行く。女が100均の皿みたいな安い食器をスーパーで買う。自分一人の食器しか家にない。しかし食事が終わると口げんかになり男は出て行く。そしてそのまま皿はゴミ箱に捨てられる。こういう描写がいい。二人が見る映画。「デッド・ドント・ダイ」。最高の男ビル・マーレイがゾンビ相手に無双する最高の映画。盟友ジャームッシュのこの映画をセレクトしてくる感じも好きだ。画面を彩る映画ポスターたち、そしてブレッソン、小津、チャップリンへのオマージュ。全編に映画愛があふれている。ささやかな幸せを小さく描いたハッピーな映画だけど、その背景には繰り返しラジオが伝える戦争のニュースが流れている。世界は暗い。でも希望はある。それはとても小さいことの中にある。沁みる演歌だった。

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