ものがたりのなか

パトリシア・ハイスミスに恋して」を見た。

なんとも切ない、だからこそ人生に物語が必要なんだを痛感させられる映画だった。自分の人生で叶えられなかった自分を物語の中に投影する。切なすぎるだろう!!これ。小説の中で生きる。虚構の中で生きる。親に認められず、世間にも本当の自分を晒すことができず、偽名で書いた小説の中で、そんな自分の境遇に光を当てる。本人の名前で書く小説に登場する主人公は、ある意味でやはり彼女自身の投影のようでもあるが、そこに描かれるのは彼女ではなく男性だ。男の話を書く。その小説で名声を得ていく。本当に書きたいものは自分の名前で書くことが許されない。晩年に出会う最愛の人は家庭のある人で、それはまるで自身が書いた小説そのままだ。しかし自分が描いた物語のようには、現実はうまくいかない。幸せとは何か?ということをグルグルと考えてしまう映画だった。

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