かえらずせいかい

「おしょりん」を見た。(タイトル書き忘れたので追記)

よくこんな映画見たな…が転じて、思いもよらない感動に包まれる映画だった。いや、前知識なしとはいえ、よくこんな映画見たなと思う。始まった瞬間、帰ろうかなと思った。今どきありえないほど前時代の教育映画的な作りの冒頭…というか、突然始まる「福井県の観光名所紹介ビデオ」。これがまったくよくできてない。昔ながらの説明ビデオで名所紹介や福井の産業の話が続いて、その上、長い。福井県がお金を出してるのか?ま、映画と関係ない「宣伝ビデオ」なんだろうなと思っていると、そこからシームレスに映画本編が始まる。え!?これ映画の一部だったの?そして始まる、きゃはは、うふふ、な子供の雪あそびシーン。この瞬間、帰ろうかと思った。ダメだこりゃ。そこから福井のいいところのお嬢ちゃんが嫁入りする話が始まって、相変わらず教育ビデオ的な進行で、もうダメだ、帰りたい…。なんて思って見ていたんだけど、これが途中で気にならなくなってくる。そしてもしかしたら、このどうしようもなさは意外に計算か!?と思えてくる。ものすごくステレオタイプに前時代的な男像で、それをふてぶてしさ全開で演じていた小泉孝太郎が、徐々に人間として体温を取り戻していく映画になっているのだ。そして実はその家に嫁いだ主人公の北乃きいは、兄の小泉幸太郎ではなく、森崎ウィン演じる弟の方に惚れていて、その恋模様は、きゃははうふふな恥ずかしい描かれ方をするのだけど、その後のその恋の行方の描き方は、語らずほのかに臭わせ、相思相愛なはずなんだけど関係は何も語られず、気持ちだけがあるように見えるという状態がキープされている。不思議なほど中盤から雰囲気が変わるのだ。終盤、状態が困難を極めてからの展開は、語りすぎず、でもしっかりキャパの大きさを感じさせ胸を熱くさせるものがあって、思いも寄らぬ感動を運んできた。はからずもなのか、意図的なのかはわからないけど、あのダメダメな冒頭がきいていたのかもしれない。帰らなくてよかったと思った。不思議な魅力のある映画だった。

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