かんたんにみえる

アルピニスト」を見た。

単独で命綱なしでクライミングするクレイジーな人については「フリーソロ」って映画で見てびっくりしたのだけど、その映画のアレックス・オノルドが、ストイックで努力の人とすると、本作の主役マーク・アンドレルクレールという人は、ナチュラルボーンクレイジーな超人というか超天才です。アレックス・オノルドは指の動き1mmまでを計算し、忠実にそれをなぞって登る精巧さで、それは映画としてすごく怖いし、ドキドキして見れたんだけど、この映画の主役マークって人は、前人未踏の登頂不可能と言われる絶壁を予行演習なしのぶっつけ本番で、何の迷いもなく軽々と登っていってしまう。凍った滝を登っていったりもする。その動きがあまりに自然で迷いがなさ過ぎて、実に簡単そうに見えてしまう。すごすぎて、すごさが全然伝わってこない。あまりの達人のワザは誰にでもできるように見えてしまう、そんな域に達している。だから映画としては盛り上がらない。しかもマークという人はお金にも名声にも無頓着で、撮影中にスポンサーも映画も放り出して失踪してしまう。そして誰も知らないところで、誰も登ったことないルートでのクライミングを単独で成功させて、とんでもない偉業を達成していたりする。なんでそれを映像で撮らせてくれなかったんだ!って言ったら、誰かが見てたらもうそれは「単独」じゃないからだって。初めては一人で登りたかったけど、2度目なら撮ってもいいよって、超難関のクライムを平気な顔してもう一回やり遂げる。前人未踏を登るのが日常。天才という人がいるなら、まさにこの人のことなんだと思う。

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