わかんないでいい

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「DAU.ナターシャ」を見た。

いったい何を見せられているのか、わからなくなる映画だった。映画だけ見てもポカーンとなるのだけど、なるほど、これは大きなプロジェクトの一部を切り取ったものだと知って納得する。オーディション人数39.2万人、衣装4万着、欧州最大12000平米のセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、制作年数15年……これをして「ソ連全体主義」を完全再現しようというプロジェクト。その一部を切り取ったのが本作。さも壮大な映画を想像するが、話自体はとある食堂の女性従業員2人の掃除をするしないの永遠と続く口げんかと、研究所職員との酔っぱらってのどんちゃん騒ぎに、生々しいセックスに、KGBによる密室での陰湿きわまりない尋問に…何とも壮大さとはかけ離れたかなりこじんまりした作品である。ただ、この異様で壮大なプロジェクトから生まれたいびつな作品として考えると、このわからなさこそが現代アートのようにも見えて、わからなくて正解!と思えてくる。不思議な作品だった。