つかまれました

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「カツベン!」を見た。
活動写真の弁士をテーマにしたコメディ。さすが周防正行監督な楽しい映画だった。とにかく冒頭の活動写真の解説からして見事だ。チャンバラものの活動写真の撮影現場に始まり、いいかげんな撮影現場の風景が描かれる。撮り直しなし、編集もなし、たぶん脚本もない。役者は「いろはにへと」と意味のないセリフをしゃべって、子どもが画面に乱入するトラブルが起きてもそのまま撮影続行。話の筋もなにがなんだかわからない映像ができあがるけど、それが劇場で上映されて弁士の語りがつくとなんだか物語として成立して見えてしまう。観客は爆笑する。まるで魔法だ。活動写真の弁士は語り部であると同時に、役者でも演出家でも作家でもあると。ここだけでもう完全に心をつかまれてしまう。周防監督の映画はとにかくいつも最初のつかみがいい。「終の信託」の冒頭も検察庁に入るシーンをものすごく丁寧に描いていて、それは初めて見る手順と光景で、あれが効いていたなと思う。良い映画はやはりつかみがいいね。