むかんしんじごく

「愛に乱暴」を見た。

痛くて、いやーな映画だった。なんという日常の闇。設定が嫌すぎる。義母と二世帯住宅で離れで暮らす夫婦。夫婦の会話は冷め切っていて、義母とのやりとりもぎこちなく他人行儀。妻桃子の日常はゆるい地獄だ。誰からも雑に扱われ、存在を認めてもらえないという地獄。かつては仕事ができる人だったらしい。今はかつて勤めていた会社で下請けのような仕事をしていて、何か提案しても却下され、若い人にもぞんざいに扱われる。バスの座席に座っていて、横に立っている子連れの女性に席を譲ろうとして拒否され、赤ちゃんに触ろうとしたら嫌な顔をされる。家では時間をかけて作った料理を夫が雑に食べて、話しかけてもそうだねしか言わない。世界の全てが私に無関心な状態。古いおんぼろの家で、彼女がていねいに扱うのは、家の雰囲気に似つかわしくないティーカップだ。このティーカップは彼女だ。世界で誰か一人でもいいから自分を大事にしてくれる存在が欲しいという気持ちの表れかもしれないし、世界の中で浮いてしまっている彼女の存在自体を物語ってるようでもある。自分に対して暴力的に無関心な世界。当たり前のことなんだけど、その中で彼女はつねに「ない」ものを探している。それは彼女の夫もまったく同じで、つねにここにないものだけを求めて、浮気相手のマンションで暮らすようになる。無関心であるという地獄で彼女が最後にかけられる言葉。その一言。なんとも胸がしめつけられました。

www.youtube.com