あれは、わたしだ

「コット、はじまりの夏」を見た。

これはわたしの映画だ。親元を離れ遠くの親戚の家に預けられる少女のひと夏の思い出。ドラマらしいドラマはない。静かな田舎の暮らしの中で塞ぎ込みがちだった少女が少しずつ表情を取り戻していく姿が描かれる。それだけの映画なんだけど、ぐっときすぎて、というか自分の深いところをついてきて、えぐられるような感覚におそわれた。幼少期から小学校に上がるまで、母の実家に預けられた。実家の酒屋。優しい叔母たちに育てられた。関係性がよくわからないオバも、母の兄のお嫁さんもいた。祖母もいた。そういう環境で育った。子どもはわたし一人だった。小学校時代は夏休みになるとほぼずっと実家に預けられた。友達もいない田舎の実家で夏休みをずっと過ごした。あの長崎の酒屋の穏やかな日々。テレビゲームもなくて、遊ぶものは何もなかったけど、ただお酒の配達について行って、少し抱けお店の手伝いをして、マンガを読んで、少ないチャンネルで遅れて放映されるアニメを見て、ずっと時計の音が響いているあの空間が好きだった。何もなくても、遊び相手がいなくても、それでよかった。夏休みの終わり、東京に帰りたくなかった。あの場所を離れるのが嫌だった。夏休みの終わり、空港まで送ってくれた叔母と別れて飛行機にひとりで乗り込んで座席に座ったときの言葉にできないほどのさみしさと切なさ。あの感覚が蘇ってきた。ラスト嗚咽をあげて泣いてしまった。40年前のわたしがそこにいた。

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月曜なのでnoteも書きました!


こっちも続いてます…