あふれてとまらん

ダンジョンズ&ドラゴンズアウトローたちの誇り」(IMX上映)を見た。

すみません、正直、自分でもまだ何を見てきたのか整理できないくらい混乱しているんですが、とにかくとんでもないものを見てしまった。これ、まぎれもなく、ぶっちぎりで、今年のベストワン映画でした。いや、もしかしたら生涯ベストと言ってしまえるくらい好きな映画かもしれない。終わった瞬間、というか見ている間もずっと、なんだか自分でも説明のつかない涙がボロボロとこぼれていた。感動するような物語ではないので別にストーリーに感動して泣いていたわけではない。とても個人的な感情があふれてきて、止まらなくなってしまったのだ。そうか、わたしはこれが見たかったんだ、という感覚。ずっとそれが頭から離れなかった。運命の人に出会ってしまったような気分だ。あの頃から、ずっと見たかったのは、夢に見ていたのはこの映画だったんじゃないかっていう感覚。剣と魔法のファンタジーもの映画はもともと大好物!もむちゃくちゃ好き。ロード・オブ・ザ・リングとか大好き。ウォークラフトも好きだし、最近だとグリーンナイトも最高だった、でも、この映画がステキなのは、しっかりファンタジーの定番を押さえつつ、しっかりゲームっぽくさも担保しながら、それでいて物語もすこぶる面白くて、アクションは全部驚きと工夫に満ちていて、その上で全てギャグでくるんでいて、しっかり笑わせてくるという、これぞ、映画でしょう!という映画中の映画をすべてやってのけているところ。ものすごいスピード感で、色んな事が起きるのに、そのひとつひとつが全然雑じゃない。まず冒頭の刑務所への移送シーンからぶっ飛ぶ。馬車に乗せられた超凶悪そうな囚人が、厳重な警備の中刑務所に入れられる。その移送方法の精密さ。馬車を刑務所の門にしっかり動かないように固定してから、刑務所の門を開き、馬車の扉を開き、中の囚人を外に出す。鎖で地面に敷かれたレールとつながれた囚人がゆっくり歩いて牢屋に向かう。これだけのシーンなんだけど、ディテールがとにかく細かい。動き一つ一つにきちんと意味がある。そこまでして丁寧に登場させたこの怖そうな囚人が何者なのか、それはぜひ見て確認していただきたいが、その描き方一つでこの映画の方向性をしっかり伝える。なんだ、コメディか。シリアスにはじめて、一瞬で転調する。そこが最高だ。物語自体も全然褒められた話じゃないのに、最後は何の違和感もなくきっちりいい物語になっている。いちいちすべて逆転させてくる。楽しくてしかたない。主人公が非力でヒーローキャラでないのもいい。4人パーティーの冒険で(それもまたゲームっぽい)、パーティーメンバーがそれぞれしっかり自分の役割を果たしながらクエストを攻略していく。とてもゲームっぽい。ゲームっぽいけど、ゲームっぽすぎない。きちんと映画になってる。回り道のお使いイベントがしっかり面白い。見せ方がいちいちうまいし、毎度しっかりギャグに転じる。40時間かけて遊ぶゲームを2時間で遊びきるようなピード感で、その間一瞬も退屈する場所がない。情報量は多いけど、説明しすぎない。全ての設定はアクションと動きで見せて、説明的に何かを見せることはしない。とにかくどこを切り取っても褒めるところしか思い浮かばない。中学1年の冬にドラクエ2をプレイして、ファンタジーの世界に夢中になって、「RPG幻想事典」という本を買って読んで、ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)の存在を知り、なけなしのお金でベーシックキットを買って、でも周囲で遊んでくれる人がいなかったから、一人で脳内でずっとルールを読んで世界を頭の中で作ってひたすら妄想の中で冒険を続けて、その中で繰り広げられる冒険は、ドラクエのちょっと砕けた笑いをともなったようないわゆるライトファンタジーっぽい世界と、西洋のダークなファンタジーが入り交じったような世界で、それは、かっこよすぎず、親しみがあり、でもふざけすぎてないような世界で、そんな自分の頭の中にあった中2の妄想世界が、目の前に自分の創造していたものよりも遙かに素晴らしい存在として現れたのが、この映画だった。見ながら、これは夢なんじゃないかと思った。そしてこれ見終わったら自分は死ぬのかもしれない、いや別にそれでもいいかくらいの多幸感に包まれた。ただ、残念なことが2つ。1つは、エンドクレジットで流れる日本版主題歌。一気に現実に引き戻された。ただ、現実に戻してくれたという意味ではこの歌に命を救われたのかもしれない、もしかしたらあのまま多幸感で死んでたかもしれないので、むしろあの歌に感謝した方がいいのかもしれない。いちばん残念なのはパンフレットが作られてないことだ。劇場の売店のパンフレット販売リストには、販売中のパンフレットと、売り切れになったパンフレット、パンフレットの製作がされてないものの一覧が貼り出されているのだけど、その中に名前すら書いてないという無視されっぷり。もしかしたら書き忘れかと思って聞いてみたら、探してくれたあげくに作ってないみたいですとのことだった。ただ、考えようによってはパンフレットがないことで、理想のパンフレットを脳内で妄想して楽しむ遊びに興じることができるから、それはそれでいいような気もする。はっきり言って、まだ何を見てきたのか、頭の中で整理がついてない。もしかしたら夢を見ていたのかもしれない、とまだ存在を疑ってもいる。このままそういう存在で終わらせておくために、もう一度見るのをやめておいた方がいいのか、それとももう一度見るべきか、いま悩んでいる。

www.youtube.com