たるをしるのです

「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」を見た。

足るを知る、そういう映画だった。足りないものを探してしまう女性の話だ。元アイドル。30代を目前に仕事はうまくいってない、恋人もいない、お金もない。不満しかない。他人が幸せに見える。幸せになりそうな他人をうらむ。努力はしてるはずなのに、おかしい。なんで自分ばかり不幸なんだ。自分が持ってるもの、いまそこにあるものがまったく見えない。幸せになりたいと叫ぶが、幸せが何かもわからない。結局欲しいものは「ないもの」で、「あるもの」には不満しかない。そのことに気がつくためのきっかけになるのが同居することになるおっさんの存在が見事だ。演じているのは井浦新。こんなイケメンのおじさんと住んだら何か始まるのでは?と思ったけど、やっぱり役者はすごい。残念ではないけど、ほどよく興味の対象になりえないくらいの気の抜けた存在としてそこにいる。なんというか、この「いるだけ」という存在のありがたみ。人がそこにいるだけで、ある種のセラピー効果を生んでいて、先日読んだ「居るのはつらいよ」という本に通じるテーマを感じてすごく納得した。「いる」だけの人に「ない」ことが不幸ではないということを無言で教わるという映画。タイトルから想像してなかったけど、ものすごく良い映画でした。

www.youtube.com