「福田村事件」を見た。
満員の劇場で見た。「○時の回は補助席ふくめて全て売り切れ完売です」当日券を求めて来た人たちに劇場主が呼びかけ続けていた。小さな劇場にこんなに人が詰めかけているのを久しぶりに見た。ものすごい熱気の中でこの映画を見た。集団の狂気についての映画だ。恐怖心が人を支配する映画。あいつらは何をするかわからないから、という恐怖心から、人が人を排除していい、そのことで家族や大事な人を守るのだという正義感で、正義の鉄槌をくだす。そうやって正義の名の下に人を排除する。自分たちと違う者を排除する。誰かが最初に手を出すと、すぐに誰かがそれに続き右にならっていく。これはどこにでも起こり得る話しだし、今も起こり続けていることだ。コロナパンデミックの時にこれに似たことが起きたのをニュースで見た。ネット上ではこれに似た光景が日毎に繰り返されている。あいつは犯罪者だ、良くないことをしたヤツだ、と正しくない行いをした人に対し誰かが糾弾の声をあげると追随して迫害し始める。徹底的に相手が死ぬまで追い詰める。正義の行いだとみんなが信じてやっている。誰も悪になろうとはしてない。ただ相手が死ぬまで徹底的に叩く。浅間山荘事件を若松孝二が撮った映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」のラストで、いちばん気弱だった青年が一言「ぼくたちは弱かっただけだ」と言ったセリフが思い出される。ただ弱いだけだ。怖いから徹底的に叩く。この映画を見て「昔は怖かった」なんて見ている人はおそらくいつでもその加害者になるのだろう、と自分がそうならないとも限らない恐怖とともに満員の劇場をあとにした。