ぐっばいありがと

5年半、ずっと、毎日、1日も休まずに続けてきたことがある。それは何か。「妖怪三国志国盗りウォーズ」だ。本当に1日も休まず。報酬をもらい続け、日課のクエストをクリアし、月替わりのビンゴも欠かさずクリアしていた。そんなゲームが、昨日の午後サービス終了した。いわゆるサ終だ。予告はされていたらしいが、気がついてなかった。昨日の朝はふつうに遊んでいた。でもいつもなら開催されるはずのイベントが表示されてなくて、何で?とは思っていた。でもまりに突然だった。突然のサヨナラ。いつものようにログインしようとしたら、終了画面が出た。なんだよ。このゲームをやりながら向かった友人のお別れ会、落とした財布を探しに行く電車の中でプレイしたあの日こと。たくさん、たくさん思い出がある。そんな風景が突然よみがえってきた。ただこのゲームが面白かったと言われたら、まったく面白くなかった。でも毎日、たぶん1時間くらいは、コーヒーを淹れながら、本を読みながら、仕事をしながら、移動しながら、あらゆる場面でこのゲームをプレイしていた。面白くはないけど、生活のリズムに必要なソフトだった。基本、ボタンを押したら戦闘は自動プレイ。ただ放置しておくだけでいい。キャラクターの能力を上げて、アイテムを強化して、強者たちには及ばないものの、それなりのところで、それなりに喰いつて遊びきっていた。決めていたルールは、1円も使わないこと。無課金を貫いた。そんなお前みたいなやつがサ終を招いたと言われたらそれまでだ。でもお金を払わないで食らいついていくことが、わたしにとっての楽しみだった。だからもちろんサ終に文句は言えない。自業自得だ。しかし大切のものを失って、心にぽっかり穴が空いてしまった。思ったよりもダメージが大きいことに自分でも驚いている。そういえば始めたきかっけを思い出した。教えてくれたのは、その頃何度か飲み屋で会ったゲーム好きの20代前半の女性だった。フロム系やモンハンをひたすらやりこむガチのゲーマーだった。なにか一緒にゲームやろうよーと言われて、でも仕事が忙しくてオンラインでモンハンなんかは無理だったので、スマホでできるゲームならというので、ちょうどサービスが始まったばかりのこのゲームを教えてもらったんだ。最初は閻魔が出るまでリセマラしないとダメだよ、と言われたけど、よくわからいからふつうにはじめてしまった。妖怪を集めて、デッキを組んで、国盗りをしていくゲーム。何が面白いのかわからない。だけど毎日ログインすればガチャが引けて何かアイテムがもらえる。よくわからいまま毎日遊ぶようになっていた。少しずつデッキも組み上がって、国盗りをしていつのまにか制覇していた。それとは別にイベントが定期的に開催されてクリアすると次々と新しい妖怪がゲットできてお金を使わなくてもどんどん強くなっていった。ただ、いちばん難しい部分はまったく歯が立たず、これはきっと課金ユーザー向けなんだろうなと思いそこには手を出さなかった。数ヶ月してまたたまたま飲み屋でこのゲームを教えてくれた女性に再会して、それまでずっと一人で遊んでいたので、チームを作りたいと話したら「何だっけ、もうやめちゃった」と言われた。だから5年半の間、ひとりで遊んでいた。ひとりでチームを作った。チームメンバーは別のアカウントを使って適当に作った操作しないキャラクターだけ。ずっとその2人チーム、基本ひとりで遊んでいた。ある日、自分のチームに見たこともない人がたくさん加入してきていたことに気がついた。2人だったチームが80人ほどに増えていた。なんだこれは!?そのチームの人と会話をしたことは一度もないのでいまだに理由はわからいんだけど、いつのまにかチームは大所帯になっていた。一度も会話したこともないし、協力プレイもしたことがない。基本5年半、わたしはひとりだった。いちばん盛り上がったのは定期的に開催されるハイスコアバトルというもので、1日2回の制限時間内にどれだけスコアをためられるか競うもの。無課金で弱よわなながら、ひたすら時間をかければ上位に食い込める。ただ最後の数分で逆転されたりして、このイベント期間は午前の部が終わる13時、ちょうどお昼時が気を抜けない時間で、昼ご飯を食べながらスコアとにらめっこし続けた日々が思い出される。自分でも呆れるくらい真剣にやっていた。面白くない、なんて言ったけど、相当楽しんでいたんだな。いつかはサービスが終わるだろうなとは思っていた。それがたまたま今日だっただけだ。でもあまりに突然で、心の喪失感がいま、整理がつかない状態になっている。今朝起きて、妖怪三国志のガチャを引いてない状態は、自分が自分でないような気がするほど、このゲームはわたしの一部になっていた。今朝、サ終画面を見て「どうでもいいようなことだ」と思ったけど、どうでもよくないといま思い直している。わたしの一部が欠けたような、それくらい大きな喪失だ。無課金でいつづけてごめんなさい。でもこれまで5年半、わたしの生活に潤いを与えてくれてありがとう。ほんとうに感謝しています。ありがとう、妖怪三国志。きみのことを忘れないよ。「神の手がサ終ですよと奪い去る 積み上げてきた思い出の束」ちょっと前に書いた短歌。いまの気分そのままだ。ぐっばい!

 


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