かれからはじまる

「リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング」を見た。

知らなくてごめんなさい、な映画だった。見て良かった。そう思えた。全く知らなかった。ロックンロールの創始者のひとりとして重要な人の存在。その名前を本当に知らなかった。でも曲は知ってた。流れる曲、流れる曲、聴いたことのある曲で、アメリカでもイギリスでも、人気のある人ではあったようだ。でも歴史から消された人でもあった。当初は皿洗いの仕事をしながら各地を興行で回っていた。初めのうち女装してステージに立っていた。やがてレコードが売れ、ラジオで曲がかかり、人気が出る。1950年代、彼の曲が爆発的に流行る。そうするとその曲を白人に歌わせる。プレスリーが歌う。パット・ブーンが歌う。曲を奪われる。パット・ブーンが歌うと曲がいきなりエネルギーを失う。こんなヤツに多割れたくないと、彼が歌えないようなもっとエネルギッシュでテンポの早い歌を作る。そんな攻防に思わず笑うが、笑い事ではない。ある意味で決死の戦いだ。作曲で入ってくる印税は0.5%だったという。それも契約不履行などを理由に払われなくなる。ロックンロールのいしずえを築いたのは彼だ。そう証言するのは、ビートルズであり、ローリングストーンズだ。彼らは本格的なデビュー前にリトルリチャードとステージで共演している。彼を尊敬し、影響を受けている。そんな彼の存在を世界は忘れていた。彼は叫び続けた。ずっとオレはここにいる、ロックはおれが作ったと叫び続けた。それが認められたのは64歳時だ。その後継を見て、涙が止まらなくなった。1997年のことだ。それから27年経ってわたしはそのことを知った。曲はたくさん知っていた。でも彼を知らなかった。かなり遅かったかもしれない。でも彼の存在をしれて良かった。とにかく見て良かった。そう思えた映画だった。

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きえゆくふうけい

「燈火(ネオン)は消えず 」を見た。

しみじみと染みる映画だった。香港には行ったことがない。学生時代、友人の影響で香港映画が好きになって、それからずっと行きたい、いつか行きたいと思っていたけど、ついぞいかないまま30年以上経ってしまった。香港といえばネオンの街というイメージだ。夜のネオン街。いつかあそこを歩く日が来るんだろうなと、思っていた。でも、もうそれは叶わないらしい。ネオン街。もうないらしい。もう何年も前にネオンが禁止になって、明かりは灯ってないという。そんな現代の香港でネオン職人だった夫を亡くした妻の映画。突然いなくなった愛する夫。その夫が生涯をかけてやってきた仕事も消えかけている。なんて哀しいテーマだ。もうこの設定だけでぐっとくる。そんな消えゆくものへの映画。ネオンがテーマではあるけど、そこには香港映画の現在が重ねられているようにも、もっと広く香港そのものの現在を重ねて描いているようにも思える。喪失についての話ではあるけど、ただ哀しいだけでも、懐かしむだけでもない、そこにすごく優しい視線があって、切ないけど、希望を持って帰れる、そんな映画だった。よかった。染みる映画だった。www.youtube.com

 

 

ぐうぜんではない

「ゴールド・ボーイ」を見た。

モンスターバトル映画でした。めちゃ面白かったー!サイコパスおじさんvs中学生3人組対決。舞台は沖縄。財閥の入婿が義父母を殺害する。この男が怖すぎる!岡田将生の見事なサイコパス感!こえーよ!イケメンで能面は怖いです!おまけに外面の演技がうまくていい人そうだから最悪。その彼の犯罪を偶然目撃していた中学生たちがいて、彼らが無謀にもこの財閥サイコパスから大金を脅し取ろうと計画するところから物語が始まる。そこからの展開が楽しい楽しい!めちゃくちゃなことになっていく。中学生の中の1人が超クレバーで、サイコパスが翻弄される。一番怖いのは実は!ってところから、物語のドライブ感が半端ない。起きること、全部最悪。えーなんでー!?やっぱりー!?の連続。最高よ!見てるだけで面白い。まさかそうなる?えーそんな仕掛けがー!!って驚きながら、でもやっぱりね!ってどこか安心して見てられる楽しいモンスターバトル。そしてエンドクレジット後にも仕掛けが!?最後まで盛り上がる!純粋に超楽しかったー。

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おかえりなさい!

「DOGMAN ドッグマン」を見た。

わーーこんなの待ってましたー!って映画だった。これ、好き。かなり好き。いや、超よかった!おかえりなさい!リュック・ベッソン!!始まった瞬間、リュックベッソンきたーーってなるファーストショット。そしてケガしてぼろぼろになった女装した男が拘留される。留置場での彼の尋問から物語が始まる。なにこれ、もう超ワクワクする!なにが始まるのって完全に引き込まれる。少しずつ語られていく過去。陰惨な少年時代。最悪の兄と父親。母親は家を出て行く。犬小屋に放り込まれ、そこで犬と一緒に育つ少年。犬に助けられ、犬しか友達がいない。犬しか信じられなくて、犬とだけ心を通わせる。そして成長して、犬たちを操る謎の男ドッグマンになる。ダークヒーローものっぽい設定。もうとにかくクセが強い。車椅子で女装して舞台でシャンソン歌って。クセ強い!で、それが超楽しい!!犬を使った犯罪のギミックの面白さ!!!兄への復讐、ギャングとのバトル、金持ちの家からの泥棒…ワンちゃんつかって、やりたい放題!けっこうヘビーでダークな話なんだけど、ワンちゃんたちが頭良くてかわいいので、安心して見てられる。いやいや、これはマジで面白かった。おかえりリュック・ベッソン!な幸せな犬映画でした!

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ほんとにありがとう

やってるようで意外にやってないのがデザインについて書くことで、これがじつはすごく苦手。いまだに苦手。ちょっとだけ気持ちを奮い起こしてnoteを書いてみたんだけど、やっぱり慣れないことをすると気が重たい。ま、こういうことも訓練かなと…。ちょっとずつやっていこう。

 

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先週は、鳥山明先生が亡くなったことが想像以上にショックで…。なんだろう、やっぱり特別なまんが家だったなと思う。少しだけそのことを書いて残しておきたいと思う。初めて好きになったマンガが「ドクタースランプ」だった。ジャンプを読み始めたのはアラレちゃんが読みたかったからだった。ペンギン村分譲中の玩具は全部揃えた。小1、2のときだ。あの頃の頭の中は、ほぼガンダムとアラレちゃんとドラえもん志村けんだった。アラレちゃんはデザインが最高だった。鳥山明が描くメカデザインが好きだった。作中に出てくる小ネタも最高だった。トロンとかインディージョーンズとか当時いいなーと思って好きにっていくものが次々マンガの中に出てくるのもよかった。「クラッシャージョー」は当時、好きすぎて親に一生のお願いと言ってVHSソフトを買ってもらった(当時で1万円くらいした)んだけど、このアニメに鳥山明がちらっと出てたりして、好きなものとのシンクロがすごいなと思っていた。小6のときに中学受験に向かうバスの中で読んでたのが「ドラゴンボール」の2巻だった。ろくに受験勉強もしてなかったけど、何の焦りもなく試験に向き合えたのは、受験会場に向かう駅のキオスクでこのマンガを買ったおかげだと思っている。そして中学時代。人生を変えたのが「ドラゴンクエスト」だ。たぶんこのゲームがなかったら今の自分はない。詳しく書くと長くなるから書かないけど、このゲームにハマった要因の7割は鳥山明の描くモンスターと世界観だったと思っている。少年時代から青春の終わりまで、いや、今もかもしれないけど、人生の大事な時間でものすごい刺激を受け続けたのが鳥山明の画だった。あの画を見るだけで心が踊る。去年「SAND LAND」を劇場に見に行って、改めて鳥山明ワールド全開の世界観に最高!って思って、やっぱり好きだーを再確認したばかりだった。まだ1枚もビジュアルを見てないドラクエ12に思いをはせつつ…。どこかで「ありがとう」という言葉を残しておきたくてこれを書いた。本当に本当に本当にありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。

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なんへるつっすか

「52ヘルツのクジラたち」を見た。

役者にうなる映画でした。いや、杉咲花すげーです。市子で演じた役にも似ているけど、ヤングケアラーで自由を奪われた女性の役なんだけど、こっちではもう少しストレートに感情を出す感じで、母の暴力に支配された娘なんだけど、その母と対面して怯えたような、でも母を求めているような、複雑な感情を表情ひとつで見せてきて、むちゃくちゃすごいな、この人って思った。ただ、あとのシーンでセリフで説明しちゃうことが多くて、メジャー映画なんでわかりやすく作らないいけないんだろうなとは思うけど、少しもったいない感じもした。とにかく役者は本当にみんなよかった。表面と内面が全然違っている。みんな何かを抱えている。その感じがしっかりある。ただ、これは自分がバカなだけなんだけど、個人的に見ている間、ずっと気になってしかたなかったことがあって…。主人公を地獄から救い出すアンという男性。この俳優の名前がずっと思い出せなくて、それがもう、ずっと続いて、もやもやして誰だっけ?で頭がいっぱいになってしまった。顔がきれいで、絶体知ってる役者だよね、でも、ずっと誰だか思い出せなくて、途中、過去の写真が出てきて、それがまた美しくて、え?もしかして男の人じゃないの?ああ、そうかも、きれいすぎるよなーと思っていて、結局、エンドクレジットで、あーーー!ってなった。志尊淳じゃん!!恥ずかしい。ずっと名前が出てこなかった。好きな俳優なのに。でもほんと、やっぱりきれいな人だね。あとこの映画、ものすごく髪の毛が印象的に使われていて、時間が行き来する中、主人公の変化は髪型で表現されるし、それが本当にそのときの感じをうまく出していて、わかりやすかった。同居する子供も髪型でこんなに顔変わるの?!だったし、志尊淳の過去の写真も。うん、髪映画でした。人の見た目は9割が髪型だな。あと、宇宙一好きな西野七瀬が宇宙一最悪な女役で出ていてよかったです。わかりやすく嫌な女で、そこでそれする?に、ちょっと笑いました。原作も読んでますが、全体的に原作とだいぶ人物や景色の印象が違う感じがした。ものすごく個人的な感想だけど。そして原作よりクジラ、多めの印象でした。架空本好きには、志尊淳(って、そのときはわかってなかったけど)が、帰宅する電車の中に貼られていた恐らく架空本と思われる小説の広告が気になりました。「蜃気楼」という小説で、30万部突破って書いてあった。いつかチェックしようっと。

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はっちゃめっちゃ

「ストリートダンサー」を見た。

純粋にすげー映画だった。インド映画なんてほとんど歌って踊ってるのに、ダンスの映画なんですよ、そりゃほぼ全編ダンスですよ。もう最初からダンス。実際に踊って、イメージの中でも踊って、店で喧嘩して踊って、ずっと踊ってる。メインはダンス大会の優勝をかけたダンスバトル。最初からみんな化け物みたいにダンスが上手いので、練習シーンもあるんだけど、それ意味あるの?な感じ。だって、突然アクシデントで即興で踊り出すだけで、全員シンクロするんだもん。練習いらないのでは!?物語もちゃんとあります。インドとパキスタンの対立。そして移民問題。舞台はロンドンです。食べ物を投げたりして、無駄にして、なんてマナーの悪い映画だ!って思ったら、その食べ物の行き先を知って、けっこうマジメな話になります。食べ物を投げるのは最悪だと思いますが。ただ、肝心の主人公が本当にイヤなヤツで…。ダンスは天才的というんだけど、みんな化け物級なので、なんでこいつだけそんな特別視されるのかわからない。いや、もちろん花はあるんですよ。彼がダンスバトル中に自分のチームを裏切って、ライバルチームに突然寝返って踊り始めると、キターーーーーって感じで盛り上がる。ん?このダンス大会、途中でチームを移籍してもいいの?てか、決勝戦でチームの名前変えちゃってるけど、OKなの?とにかく、考えはじめると全部がめちゃくちゃで、ハチャメチャな映画なんだけど、そんなのどうでもよくなるくらいハチャメチャに人間離れしたダンスを堪能できます。いや、まじで、ダンスすげーから。で、最後は移民問題まで考えさせられるシリアスさもあって、やっぱりハチャメチャな映画でした。

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