えんどくれじっと

「憐れみの3章」を見た。

変な気分になる映画だった。同じ監督、同じキャストで3つの全然違う話をやる。役者の印象が変わる。役割が変わる。世界が変わる。物語的なつながりはないけど、テーマはつながっているように見える。どれも支配の構造を描いていた。誰かに何かに支配されないと生けていけない、そしてそれに執着する人のもろさ。支配者の言いなりになることから逃れようとするが、そのことで自分が生きる目的がわからなくなる1章目、自分が何者かを証明するために無理な注文に応え続ける2章目、捨てられても盲目的に教えに従い続ける3章目。どの話もとにかくエグい。とにかく不条理でコメディにしてもブラックがすぎる。なんだ、これは?と思いながら、この何とも言えない世界に釘付けにされる。逃れられなくなる。とにかく音の使い方がすごく好き。はじまった瞬間から腹に来る音楽の使い方もいいし、その音がやがて車に消えていったり、音で世界を感じさせてくる。いや、これ、音を聞いてるだけでも楽しい映画だった。画的には見てられないくらい痛いシーンがあったかと思えば、妻との思い出だと言って友人たちと見るホームビデオの光景に大爆笑してしまったり、普通の移動シーンのはずなのに度が過ぎるくらいの猛スピードで走り出す車だったり、妙な違和感がずっとあって、とにかく約3時間、変な世界を味わい尽くした。毎回つくエンドクレジットが最高で、そこでめちゃくちゃ変な気分になる。いや、ラストなんかもう…。こういう映画こそ映画館で味わいたいよなって映画で、最高でした。

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