「オールド・フォックス 11歳の選択」を見た。
きれいな映画だった。画面がとにかくキレイ。陰影の感じや色あいがとても好み。もうずっと見てられる。舞台は1989年の台湾。女性の化粧の感じとか、日本のバブル期とかなり近いのね。しかも台湾でもバブルがあって、一気に高まって、瞬時にはじけたようで、それに翻弄される人たちの話がなんとも切ない。食堂の老夫婦の株価が上がって浮かれ上がって、家の中を行進するシーンとか、その後の暴落を知ってるから、見てるだけで泣きそうになる。主人公は貧しい地域で、誠実に生きている父親と2人暮らしの11歳の少年。ガスを節約したりお風呂に水を貯めて生活水にしていたり、貯金をして父親に自分の店を持たせたいと願っている。ただ土地の価格は高騰するし、父は株もやらないし。たまたま地元の大地主の老人と出会うことで勝ち組の世界を知ってしまった少年は、父親を負け組の劣った人間としてさげすむようになってしまう。誠実さとか、勝ち負けの論理とか、親子の対立とか、お金と人生とか、他人を思いやるとは、そのへんのドラマを映画は少し引いたところから俯瞰する。とくにどこにも白黒はつけない。ものすごくフラットに人間を描く。この感じ、とても好き。そしてとにかく画面が美しい。このままずっと終わらないで欲しいなって気分になってくる。でも映画は終わる。ある意味残酷だ。門脇麦によく似た俳優が出ているなと思って見ていたら、門脇麦でした。ふつうに台湾の俳優だと思える感じがすごい。あとファミコンとゲームボーイを同時にプレゼントされる1989年のクリスマスは神だと思います!