じごくですろーど

フェラーリ」を見た。

想像の遥か上を行く地獄のデスロードだった。なんてものを見てしまったんだろう…。すごいものを見た。いや、面白いのだ。ただこの作品に面白いなんて言葉を使ってはいけないような、そんな映画にも思えた。なんてものを見せてくれるんだ。もう頭のなかがぐちゃぐちゃになった。平日の夜の疲れ果てた脳で見たからだろうか。脳が悲鳴を上げた。それほどすさまじい情報量と、それ以上にものすごく禍々しい映画だった。タイトル通り、フェラーリの映画だ。マシンが駆け抜け、スタイリッシュで、華やかで、様式美が全面に溢れるような映画なんだろうと思った。いや、そういう映画ではある。ただ、想像の遥か上を行く、なんだか得体の知れない映画だった。最初からすごい。始まった瞬間からもう洪水のように、あらゆるものが流れ込んでくる。次々登場する人物の多さ、レースの轟音、カチコチと刻まれるタイマーの音、矢継ぎ早に繰り出される会話。この映画、一瞬も止まらない。常に動き続ける。アクション映画ではなく重厚な人間ドラマなのに止まらない。そしてそこに描かれるのは人間の業だ。ひたすら強欲で傲慢で欲深くて剥き出しで野生的で凶暴で、それがずっと走り続ける。やばい。これは頭が割れる。そしてレースの凶暴性。映画の速度が加速する。スピードが最高潮に達すると同時に地獄の蓋が開く。そこからの絶望と目を覆いたくなる光景に呆然となる。それでも映画は止まらない。人間的な、しかし悪魔にしか見えないような何かとてつもない余韻を残して終わる。人間の業が生み出す禍々しい地獄。これぞ地獄のデスロードみたいな映画だった。

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