みずとかぞくとか

「波紋」を見た。

水と家族を巡る話。存在と価値、怒りと赦し、宗教と死、人の業を痛烈に描いたコメディでした。とにかく笑った。あまりのいたたまれなさや、気まずさに爆笑してしまう。よくできた映画でした。まず水の使い方がうまい。冒頭、スーパーに水を買いにきた女性たちの達の列。なぜ、ミネラルウォーターにそんなに群がるの?って思ったら、原発事故直後で水道水が危ないというあの時の話だったとわかる。そして主人公の女性が家に帰って料理を作りながら、水を使うのだけど、水道水は危ないから使えないと言いながら、なぜかお米に水道水を使い始める。そしてお粥を作り始めるのだけど、さてこのお粥を食べるのは誰なのか。そういう水の使い方ひとつで人間関係や感情を表すのがうまい。それが全編にわたって貫かれる。この主人公が誰に対してどう思っているのか、どの水を誰に差し出すのか、誰かと会う場面にそこにどんな水が写っているのか、水を使って心理描写をうまく表現していて、内面に流れる心情がうっすらわかるようにできている。基本的にはコメディだけど、心の奥は完全にホラーでした。そしてダンス映画でもありました。ダンスがすごくいいです。水の宗教のダンスもですが、きわめつけはクライマックスでした。痛烈なダンスでした。それから柄本明の使い方がよかったです。パート先のスーパーに4回買い物にくるだけの役で、本当のちょい役ですが、この存在は実はとても大きい。あと笑顔の人間の怖さも感じる映画でした。人間のいやな面を軽く深く突きつけてくる。こういうの大好きです。

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