ふあんでしかない

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「17歳の瞳に映る世界」を見た。

これ、すごかった。17歳の少女が見る世界の不安そのものが映画になっている。不安というか、苛立ちというか、恐怖というか、世界に対する不信感というか、そんなどうしようもない気持ちを体感するような映画だった。予期せぬ妊娠。中絶するためにペンシルバニアからニューヨークへ、いとこで親友の少女と2人で旅するロードムービー。たった数日の話でセリフもほとんどない。この映画、大半を占めるのが無言で移動するシーンだ。最初は長距離バスでの移動。窓の外にニューヨークの街が見えた時のなんとも言えない不穏な感じ。窓にすっと一瞬浮かんだ街の姿がすぐに隠れる。ニューヨークについてからは、ずっと無言で移動するシーンがつづく。鉄道の車窓に映る光。窓に映る自分の顔。うつろな表情。すれ違う人たちの視線。他者への恐怖と不信感。映像を通じてそれらが流れ込んでくる。支えになるのが同行してくれる親友の存在だ。ほぼ無言でずっと横によりそっている。この無言がこの2人の深い絆を表している。途中、仲違いもする。しかしその和解の仕方がじつに自然だ。そして窮地を抜け出すために親友が取る行動と、そんな彼女にそっと手を出し出す主人公の姿が切なくもあり美しくもある。ほんとにこの映画、ほぼ何の説明もないんだけど、だからこそ普遍的ものを描き出している。もちろんハッピーな映画ではない。ただ、力強くて誠実で、心に残る映画だった。

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